第42話 ありきたりな花金に
拓哉が佐藤への情報提供をこなしつつ、仕事も何とか乗り切った週末。
唯志から言われていた光の為に必要なものもある程度は通販で買い揃えて到着を待つばかりで、拓哉は一週間やり切った満足感に加えて失いかけていた自信も取り戻しつつあった。
そんな金曜日。
今日の仕事も終え、花金ではあるが拓哉は光と一緒に自室にいた。
世間では花金と言えば飲みに行く風潮がいまだに根強く残っている。
拓哉の会社も例に漏れないが、拓哉が付き合うことは稀で今日も何事もなく部屋へと帰った。
そもそも誘われてないし、誘われたとしても光のこともあり断るつもりだったが。
余談だが、朝田は上機嫌で部下たちを引き連れて飲みに繰り出していたのを目撃した。
数日後、恐らく修羅場になるだろう朝田のことを考えると拓哉はいい気味だと思ってほくそ笑んだ。
実際、朝田にとって楽しく飲めるのはこの日の飲み会が最後となる・・・。
話は戻って拓哉と光。
相も変わらず夕食はコンビニで買ってきたものだ。
「タク君、今度私が夕食作ろうか?コンビニばっかりだと栄養も偏りそうだし。」
いい加減コンビニ弁当が飽きたのか、居候の申し訳なさからか光が提案する。
「光ちゃん、料理できるの?」
「少しなら・・・でも未来では調理器具も便利なものが多かったから、この時代で上手く出来るか自信は無いけど」
光は苦笑しながら言った。
「食材とかはあまり変わってないみたいだし、スーパーとかの場所も覚えたし、迷惑じゃなければ今度やってみるよ!」
今週の日中、光は周辺の探索などをメインに動いていた。
その時に周辺施設なども覚え、自分の出来ることなどを考えたんであろう光の提案に、拓哉は内心すごく喜んでいる。
女子の手料理を食べる機会なんて今までなかった。
しかも光の手料理。嬉しくないわけがない。
「・・・じゃあ、お願いしようかな?」
全身で喜びを表現しつつお願いしたら良いのに、無意味に謙虚に言う辺り拓哉のDT力がさく裂していた。
「うん、任せて!失敗しても食べてね!」
光は楽しそうだ。自分でも出来ることがあって嬉しいのだろうか。
「ふぅ・・・」
と拓哉は一息つく。
夕食も終わった。佐藤の依頼の方もひと段落着いた。
間宮の連絡待ちの状況とは言え、光が帰る方の調査も何か出来ることはやっておく必要がある。
そう思って拓哉はやる事を考えた。
思えばここ数日、佐藤の依頼の方ばかりで光の方の調査は全く進めていない。
帰ってからも何か情報提供を・・・と考え、川俣の調査をしていた。
会社の同僚たちから得た情報で川俣のSNSのアカウントにたどり着けたのは収穫だった。
これは結構な決定打になりそうだ・・・と佐藤から聞いている。
事実、後日このSNSの情報から佐藤は朝田・川俣の不倫現場を押さえることになる。
光の方はというと、前述の通りこの周辺の探索やネットサーフィンなどをして現代やこの街に慣れることを優先していた様だ。
確かに長期戦となる可能性があるし、現状は待ち時間になわけだから、いざという時の為にも大事なことだと思う。
単に光が好奇心旺盛なだけで、深く考えずに動き回っていた可能性も高いが・・・
いずれにしても今日は金曜日。
探偵の方もひと段落だし、記者の方はまだ連絡が無い。
そして明日からは土日。
折角時間が作れるわけだから光の為に出来ることはやっておきたい。
決して光の評価を稼ぎたいとかそんな打算ではない。
困ってる光の為に自分に出来ることをやるだけだ。
と、拓哉は何故か自分自身に言い聞かせている。
拓哉はとりあえずでメインPCの方の電源を入れた。
「タク君、何かするの?」
光が拓哉に問いかける。
「うん。少しでも何か調べようかなって。」
「そうなんだ!じゃあ私も頑張ろう!こっちのPC借りていい?」
「良いよー。」
そう言って光も拓哉のサブPCに向かい合う。
(とはいえ、何から手を付けたものか・・・)
PCを立ち上げたはいいものの、何をしたらいいかもよくわかっていない。
とりあえずPC起動と共に立ち上がるskypoに目を通す。
(誰か役に立ちそうな人いないっけ・・・)
--ふと、横から気配と視線を感じた。
「あ、これskypoってやつ!」
気づかなかったが、光が真横からのぞき込んでいて、ギョッとしたのと同時に近すぎる距離にドキっとした。
「あ、うん。skypo。勝手に立ち上がる様になってるから・・・」
「そうなんだー。唯志君か莉緒ちゃんはいるー?」
「莉緒さんはskypoフレンドじゃないから・・・岡村君はいないみたいだね。」
拓哉はそう答えつつ、また『岡村君』かと思っていた。
「そっか、残念。」
と、光は本当に残念そうにしていたので拓哉は内心もやもやしつつも「何か用事でもあるの?」と聞いてみる。
「別に用事は無いよー。用事あればyarnがあるし。いるのかなーって思っただけ。」
と、光は拓哉の思いとは裏腹に何気ない感じで答えた。
「そっか。あ、ノキ君・・・ノムさんならいるっぽいよ。」
「そうなんだね。本当にいつもいるんだね、ノムさん。」
と、光は笑っている。
そう思っていた時にskypoでメッセージが飛んできた。
ノキこと野村からかと思ったが、表示されている名前は『shinya』。
拓哉たちの大学の友人『宮田 慎也(みやた しんや)』からのメッセージだった。
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