第7話 貴子との関係

 下校時に、校門の前に来ると声をかけられた。



「どれだけ待たせるのよ。 遅すぎ!」


 貴子が、不機嫌そうに近づいて来た。



「本当に、いたのか」



「約束したじゃん。 当たり前でしょ!」



「何が、目的なんだ? お前が、俺と一緒に帰ろうなんて思わんだろ!」



「フフ、そうね。 歩きながら話すわ」



 貴子は、時々俺の方をチラチラと見ていた。



「元太って、強面だけど、眼鏡取ると、イケてるかも? ねえ、眼鏡取って見せて」



「・ ・ ・」



「ねえ、聞いてるの?」



「・ ・ ・」



「何か話したらどうなの?」



「・ ・ ・」



「本当に、つまらない人ね。 じゃあ本題に入るわ。 但し、この話を聞いたからには、私に協力してもらうわよ。 まずは、協力すると約束して!」



 俺は、これまで我慢して聞いていたが、貴子のあまりにもワガママな態度に、猛烈に腹が立って来た。


 腹が立つと、俺は冗舌になる。



「黙って聞いてりゃ良い気になりやがって! 何でお前に協力する義務がある? 大方、涼介の事が好きだから仲を取り持ってくれと言いたいんだろうが、まっぴらゴメンだ。 初めて見た時に可愛いと思った俺がバカだったぜ! 失せろ、二度と俺の前に、面を出すな!」



「えっ、ちょっと待って …」


 貴子は、寡黙な俺が、冗舌に話した事に驚いていた。



「何度も言わすな! 俺は、お前とは何の関わりもねえ。 失せろ!」


 俺は、睨みつけた。すると、貴子はどこかに逃げて行ってしまった。




(何なの、あいつ。 喋れるじゃん。 涼介との仲を取り持つよう頼みたかったけど失敗した。 でも、あいつ初めて見た時、私の事を可愛いと思ったと言ったけど本当かな?)


 貴子は、思った。



「でも、むしゃくしゃする。 久しぶりに、ゲーセン寄って帰るわ」

 

 貴子は、つぶやいた後、ゲームセンター宝島に向かった。



◇◇◇



 俺は、むしゃくしゃしていた。少し前まで好きだと思っていた女子が、実は最悪の性悪女だったとは、自分の見る目のなさに腹が立っていた。 


 どうせ両親の帰りは遅い。俺は、ストレス発散のため、ゲームセンター宝島に向かった。



 ゲームセンターに着くと、いつものように、麻雀ゲームを始めた。このゲームは人気が無いため、俺の専用機のようになってる。



 しばらくすると、奥の方から、男性と女性が言い争うような声が聞こえて来た。

 

 俺は、正義感が強いから、様子を見に行ってしまった。



「彼女、どうしてくれるんだよ。 俺達は傷ついたんだよ」



「面識がないのに、私を誘わないでください」



「そうは、いかないさ。 君のキツい言い方に、精神的な苦痛を受けたんだ。 慰謝料を払う変わりに、カラオケに付き合う義務がある」



 声が大きいので、遠くまで聞こえた。遠目に見える女性は、強がっているが、今にも泣きそうだ。



「んっ、あれは!」


 絡まれている女性は、貴子だった。



(あいつ、何で、こんな所にいるんだ? それに絡んでる連中、昨日、懲らしめた3人の大学生だ)

 


 助けようか迷ったが、正義感から、勝手に足が動いた。




 俺は、仁王立ちになって、不良大学生の3人を見据えた。



「おい、お前ら懲りないな!」



「あっ、お前。 変な画像をばら撒きやがって、大学に行けなくなったぞ。 どうしてくれる!」



「自業自得だろうが!」



「お前、その制服、この女と同じ、上等学園高校か。 頭良いんだな。 でも、お前の素性が分かったぜ!」


 茶髪のチャラ男が言った。



「それが、どうした。 脅しのネタにするなら勝手にしろ。 但し、命懸けで来いよ!」


 俺は、凄んで見せた。



「怯むな、奴は1人だ。 3人で一斉にかかれば勝てる!」


 今度は、ガタイの良い、ロン毛の男が言った。



 言うが早いか、3人は一斉に俺に殴りかかって来た。


 俺は、一発わざと殴らせ、その分、ガタイの良い、ロン毛の男に、渾身の一撃をレバーに叩き込んだ。



「ウグッ」



 ガタイの良い、ロン毛の男は、泡を吹いて倒れ失禁した。


 次に、茶髪のチャラ男に対し、金的に蹴りを入れた。奴は、苦しそうにのたうち回った。


 最後の1人を見ると、一目散に逃げ出した。


 俺は、その男を追いかけて、飛び蹴りを喰らわして倒し、脇腹を蹴り上げ失神させた。



「ほら、ボサボサしてないで、早く逃げな!」


 俺は、貴子に優しく言った。



 彼女は、俺の顔を見て、アワアワ何か言っていたが無視した。


 その後、殴らせた時に吹っ飛んだ眼鏡を拾ってかけた。


 唯一意識のある茶髪のチャラ男を見ると、奴は震えていた。



「これに懲りて、もう悪さをするなよ。 怖いお兄さんに連絡するぞ!」



「もうしません。 すみませんでした」


 そう言うと、茶髪のチャラ男は、倒れた2人を起こして、逃げて行った。



 その後、俺は、何事も無かったかのようにゲームセンターを後にした。何やら、貴子の声が背後から聞こえた気がしたが、振り返らずに帰った。



◇◇◇



 家に帰ったが、両親はまだ帰ってない。


 俺は、ふと、スマホを見ると、沙耶香からメールが来ている事に気づいた。



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元太さんへ

明日、一緒に勉強しよう。都立図書館で、午後5時に待ってるね。

凄く楽しみにしてます。

      沙耶香

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 俺は、嬉しくなり、直ぐに返信した。



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了解しました。

      元太

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 すると、彼女から、またメールが来た。



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返信ありがとう。嬉しいよ。

軽食コーナーで食べるお菓子を作って行くけど、元太さんの苦手なものとか、アレルギーはある?

      沙耶香

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 俺は、また直ぐに返信した。

 


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苦手なものやアレルギーはありません。見た目と同じで丈夫です。

でも、俺なんかで良いんですか?

      元太

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 今度は、少し間をおいて、彼女からメールが来た。



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貴方は、見た目も心も素敵な人よ。

腕によりをかけて作っていくね。

明日が待ち遠しいわ!

      沙耶香

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 俺は、心の中でガッツした。涼介の事が頭をよぎったが、直ぐにそれを打ち消した。そこには、沙耶香の事を想う自分がいた。



ピンポーン



 突然、インターホンが鳴った。誰かと思いモニターを見ると、そこには貴子が立っていた。


 何やら、思い詰めているように見える。

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