stand by me
甘夏みかん
第1話
都会から田舎に来た麻衣は、初めての環境になかなか馴染めずにいた。
麻衣は周りの景色を見た。あるのは、寂れたビルや山ばかりだ。麻衣がいままで住んできた町は、都会だった。オシャレなお店が並んで人通りも多い。そんな場所。物心ついた時から都会で暮らしてきたので、麻衣にとってはそれが「普通」だった。温かく優しい風が吹く内陸の街。住んでた時は気付かなかったが、どれだけ幸せな場所だったのか、今になってわかる。麻衣が田舎で暮らしていくのは大変なことだった。田舎には遊ぶ場所や、買い物する場所が少ない。何かをするわけではなくても、景観の中にオシャレな建物や色が付いたものがあるかどうかで気分は大きく変わる。何もない田舎は麻衣を不安にさせた。ここは日本の端っこで、そのためか、乾いた風が、刺さるように吹いている。ただ単に田舎だというだけではなく、過酷な場所だと思う。中学三年生の修学旅行で来たことがある。なぜその時に気づかなかったのだろう。旅行とそこに実際に住むことは全く異なることなのだ。
麻衣は売店に寄った。会社の近くにある売店にはノートやペンが売ってある。新品のノートやカラフルなファイルが並んでいるのを見ると少し安心した。「麻衣ちゃん・・・だよね。」声をかけてきたのは会社の先輩だった。会社にはなぜか男が多い。麻衣の家は会社の近くにあるため、先輩に出くわすことがある。正直言って、面倒臭いので、会社の外で先輩とはなるべく関りあいたくはない。しかし無視をするわけにもいかないので、「お疲れ様です。」と麻衣は言った。都会だと街中で知り合いに会うことは滅多に無い。ご近所づきあいというものもあまり無い。麻衣にとってはこの田舎の風習が小さなストレスになっていた。小さなストレスでも積み重なれば大きくなる。麻衣は誰にも会いませんように、と祈りながらなるべく下を向いて歩いた。家について、鍵をしめた。安心してどっと疲れが出てくる。鞄を雑において、クッションの上に飛び乗った。(私は田舎に向いていない。)買ってきたお菓子を開ける。チョコレートのかわいいサンリオのパッケージ。ピンク色に、色んなサンリオのキャラクターが描かれている。それを見ると麻衣はなぜか安心し、チョコレートを一つ口の中に入れた。
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