軽音楽部

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軽音楽部

 私はとある女子校の軽音楽部の部員で、何のパートを担当しているのかと問われればそれはあなた次第なのだが。

 ある放課後、顧問の女性教諭に呼び出される。

「全員一列に並んで、外へ向かってちょうだい」

 顧問は悲壮な顔を浮かべている。

リードギターの女、ベースの女、キーボードの女、ドラムの女、カッティングギターの女、DJの女、VJの女、それに続いて、私。一列に並び昇降口から外へ出る。外は戦争の最中だった。”黒服”を身にまとった屈強な軍人たちが、校庭を包囲している。赤レンガ造りの校舎は半ば崩れ落ち、生き残った赤レンガの一枚壁が、今にも倒れそうに突っ立っているだけだ。

「壁を正面にして並びなさい」

 顧問が言う。言われた通りに、壁を正面にして私たちは整列する。そして軍人たちに布で目隠しをされる。

「さあ、みんなにお別れの挨拶をして」

 悲痛な表情を浮かべた顧問の顔が、この世界で最後に見た景色になる。私たちは目隠しをされたまま、手を後頭部で組むように指令される。

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軽音楽部 @McDsUSSR1st

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