地獄道
門前払 勝無
第1話
「地獄道」
誰からも祝福されずに産まれてきたー。
1年で一番寒い日の深夜に産声を上げた。
母親は堕ろす費用が払えなくて、その子を産んだのである。
死なない程度の食事を与えられて育っていった。
保育園の頃から周りと違うと感じていて極力他人と接することを避けていた。
小学生の頃には自我が芽生えてきて自分の世界を造り始めていた。
中学生ではすでに完成していて、恵まれた他人が愚かな事をしていたり、情けないのを見て自分よりも幸福な環境下に居るのにも関わらず不幸を装っているのだと不思議であった。
この頃から人間を観察して空想の物語を書くようになった。
幸せとは何なのか
運命とは
望まれずに産まれてきて、祝福されずに生きてきた自分に出来ることは何なのか…。
同級生の悪さの身代わりになると周囲は「やっぱりか」という反応を示していた。素直に正直な事を言うと、毛嫌いされた。
大人になり豊かな先が見えるようになる度に神の命令で餓鬼達に阻止される。
負けずに再び歩き出すと何度も餓鬼が現れて邪魔をしてくる。
愛する人が現れたと思うと狐であり幸福の幻想で騙してくる。その都度、全てを失う。
餓鬼達とは本気で戦うのだが、いつしか理解したのである。此処は地獄なのであると、餓鬼や狐、悪、憎悪、修羅の国なのである。
何か希望のように見えていたのは月明かりであり、決して手の届くものではないのである。
ある狐が言ったー。
貴方が間違っている。
狐でも良い、地獄でも良い、ただ自分を観ていてくれるのならどんな修羅場も試練も怖くないと思っていたが、やはり違っていた。
明るい道を見つけると入り口の手前で餓鬼達に消されるのを何度も何度も経験しながら地獄道を歩く…解るのは自分だけである。
おわり
地獄道 門前払 勝無 @kaburemono
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