第37話 ようやく会えた(1)
翌日から、教会へ行き聖女として有力者の関係者の治療を行う。
「ふう」
私は馬車の中で溜息をつく。
「大丈夫ですか?」
そんな私の様子にエイナが心配そうな表情で聞いてくる。
「ええ、大丈夫。それにしても、枢機卿は今日も王太子殿下の事について聞いてきたわね」
「はい。何か進展があったと思ったのでしょう」
「あとは、私の反応を見て、どう行動するか見極めているというところかしら?」
「おそらくは――」
「そうよね」
いまの教会は、私と運命共同体と言う事もあり、互いに情報共有は好ましいのだけれども、やはり色々と思惑があるわけで、そう上手くはいかない。
なので、枢機卿も手を替え品を替え探りを入れてくるのでしょうね。
邸宅に戻ったあとは湯浴みをし、食事を摂ってから自室へと戻る。
そして、日記をつけていると扉がノックされた。
「はい」
「パトリックだ」
「お兄様? どうぞ」
丁度、自室には誰も居らずお兄様は宮廷の魔法師団が着るコートを羽織ったまま。
「あら? お兄様。本日は、コートが……」
「ああ。いまは、まだ職務中だからな」
「そうなのですか」
そこで私はあれ? と、思いつつお兄様をジッと見る。
「ど、どうした?」
「いえ。職務中のお兄様がどうして邸宅に居られるのかと疑問に思いまして――」
「それは……、王太子殿下に接見する準備ができたからだよ」
「ラインハルト様に!?」
「ああ、どうする?」
「是非っ! それで、いつからですか?」
「今からだ」
「――え?」
「最近、この邸宅付近に不審な人物を多くみる。だから今からすぐに向かう。いいな?」
「はい」
頷くと同時にお兄様は私を抱き上げると邸宅の2階の窓を開けると同時に飛び降りる。
地面があっと言う間に近づいてくると共に、私を抱き上げているお兄様は音もたてずに地面へ着地した。
「少し静かにしていろ。いいな?」
私は黙って頷くと、お兄様は魔法で身体強化をしているのかあっと言う間に邸宅の中庭を通り過ぎると、5メートル近くはある邸宅を囲んでいる壁を跳び越す。
そして、そのまま日が沈んだ貴族街をしていき――、見慣れた建物が見えてくる。
「あれって……、王城ですか?」
「ああ。そうだ。そこに王太子殿下は居られる」
降ろされた場所は、王城と回廊で繋がっている尖塔の一つ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます