第16話 夕飯はドラゴンの焼肉です。
「エミはん、鋼鉄製の矢を何本か作ったってくれへん?」
「別にいいですけど、重いですよ? 一本なら、まだしも複数本を持って移動は厳しいかと……」
「せやったら、持てるように体を鍛えたら?」
「行けると思いますけど……本当にいいのですか? 体を鍛えて!」
私の言葉に、ユーリエさんが体をガクガクと震わせ、顔を青くする。
「う、うち……おかしいわ。か、体が……」
どうやら、記憶の奥底に色々と封じ込めても体は覚えているみたいですね。
「無理はしたらいけないと思いますので、また次回にしましょう」
「せ、せやな……」
「とりあえず矢は軽めのを作っておきますね」
鋼鉄製の矢は威力があるけど、重量があるため、カーボン素材を利用した矢を作ることにする。
地中内の鉱物を流用し、矢を100本近く生成。
「これなら威力は鋼鉄製の矢よりは劣りますが、重さは軽いですし木製の矢よりは丈夫ですので、これを使ってください」
「これって……めっちゃ軽い!?」
「それなら、重さとして移動を阻害しないですよね? ただ、量が量ですので持ち運ぶ際には考えてくださいね」
「おおきに、エミはん」
二人して、また丸太に座りドラゴンが解体されていく様子を見る。
「なあエミはん」
「何ですか?」
「エミはんって、ほんまは何もんなん?」
「村から家出をしてきた魔術師見習いです」
「……ほうか」
本当のことを言う訳にもいかない。
「なら、もうええわ。誰にだって言いたないことはあるさかいね」
私は頷きながら時折周囲を索敵の魔法で調べて脅威が近づいていないかを確認し続けておく。
それから、数時間後にドラゴンの解体は終わった。
「エミ。アイテムボックスの中に、それぞれ区分けして入れておくことはできるか?」
「できますけど、とりあえず商人さんの名前を書いた紙を貼っておいてくださいね。アイテムボックスの中に名前分けして入れておくことはできないので」
「ああ、分かった」
スパークさんの指示で、次々とドラゴンの部位に貼られていく商人の名前が書かれた羊皮紙。
そして貼られた側から、私はドラゴンの部位をアイテムボックスの中へと入れていく。
30分ほどで、アイテムボックスに入れ終わったあとは、残っているのは肉の部分だけ。
「あの、この肉は?」
私はスパークさんへ話しかける。
「それは、今日の夜食だな。ドラゴンの肉はワイバーンと違って美味だからな。エミも食べるといい」
「そうなのですか……」
ドラゴンの肉って、始めて食べますけど、少し気になります。
ちなみに料理は、ドラゴンの肉に岩塩を振って焼くだけのシンプルな物。
でも、A5の牛肉みたいな味でとても美味しいかった。
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