第15話 ユーリエさん改造計画(2)

「ほんまに?」

「はい!」


 私は自信満々に頷く。

 日本の科学的トレーニングを取り入れれば何とかなると思うの。

 そう考えると――。


「ほんでどうすればええのん?」

「簡単です。筋肉というのは、たくさん運動すると疲労して壊れて、休むと修復された時に強く強靭になるんです!」

「つまり体を鍛えて、エミはんに身体を治してもらえばええん?」

「もっと、簡単に短時間で鍛えられる方法ですっ!」

「そないなモンが!?」

「はい!」

「ほならお願いできひん?」

「それでは、同意していただくという事になりますが、たぶん色々とあると思いますので、まずは、これを口に巻いてくださいね」

「口を塞いだらええん?」

「はい、途中で叫ばれたりしたら皆さん困りますので」


 私が、話をしている間に猿轡をしてくれたユーリエさん。

 

「さて、いきます」

「んん?」

「それでは、手を出してくださいね」

「んんん?」


 シッカリとユーリエさんの手を掴み――、身体強化魔法を使いつつユーリエさんの手を握り――そして握りつぶす。


「んんんんんんんんんんんんんんんんんんんんんんん」

「ヒール」

「どうですか? 効率いい修行法です。これを一度するだけで、数パーセントの筋力が上るはずです」

「んーっ、んんーっ」


 必死に顔を左右に振るユーリエさん。

 私も分かっています。

 痛いということくらいは。

 でも短時間で筋力を引き上げる為には、仕方のないことなのです。

 だって、ユーリエさんが求めたことなのですから。

 ユーリエさんが初志貫徹できるように協力するのが私の宿命。


「大丈夫ですよ? ユーリエさん。すぐに強くなれるように鍛えますから」

「んんんっ!?」


 逃げ出そうとするユーリエさん。

 その身体を、砂鉄を使って作り出した鎖で雁字搦めにして地面の上へ転がす。


「大丈夫です。すぐに終わりますので――。えいっ!」


 ユーリエさんの手を握り、砕いて、すぐにヒールをして、それを繰り返す。

 片手だけではバランスが悪くなると思って、1000回くらい超えたあたりで、もう片手も――。

 3000回を超えたあたりで、砕けなくなったので、私の理論的に正しいと察しながら最後のヒールをする。


「ユーリエさん。どうですか?」

「……」

「ユーリエさん?」

「……」


 白目で気絶しているユーリエさん。

 とりあえず、私はユーリエさんが起きる前に猿轡を外して、さらに鎖も解いていく。


「んーっ……、ここは……」

「大丈夫ですか? ユーリエさん?」

「にゃああああああ」


 私の顔を見た瞬間、ユーリエさんが絶叫し後退りしていく。


「だ、大丈夫ですか? ユーリエさん」

「だ、だいじょうぶ。何ぞ酷い悪夢を体験したような気ぃする」


 何か分からないですけど、酷い体験のあまりに体験したことを記憶の底に封じ込めてしまったみたいです。

 ちょっとやりすぎたかも知れないです。

 次回からは、もう少し気を付けましょう。


「それでは、弓を引いてもらえますか? 矢は、これを使ってください」


 私は、砂鉄から錬成した鋼鉄の矢を渡す。


「やってみる」

「はい!」


 ユーリエさんが、弓を引き絞り鋼鉄の矢を放つ。

 その威力は、私が放った時と大差ない。


「でけた! できたよ!」

「良かったですね」


 私は、ユーリエさんが放った矢が大木を吹き飛ばしたのを見ながら両手で拍手する。



 

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る