第6話 辺境の地に到着しました。

 冒険者ギルドで、お金を稼ぎ、出立したあとは、しばらく経つと牧歌的でのどかな光景に変わる。

 道中、回復魔法で路銀を稼ぎつつ、気が付けば同行者が次々と増えていき――、冒険者の方に色々なことを教わるというのどかな毎日が続く。

 そして――。


「お嬢様、お嬢様、起きてください」

「どうしたの? ウルリカ……ふぁーあ」


 思わず欠伸をしてしまう。

 ここ一週間、貴族としてではなく市民として護衛を自主的にしてくださっている冒険者の方と行動をご一緒させて頂いているおかげで、私もずいぶんと一般的な冒険者らしくなった気がする。

 

「エリーゼ様、到着致しました」

「そうなのね……あと5分……むにゃむにゃ」


 起きたばかりで頭が働かない私は、馬車の中で横になる。


「エリーゼ様……、起きてください。民に示しがつきませんよ」

「民?」


 何度も揺すってきて寝かせてくれないウルリカ。

 今日は、良い天気で涼しくて、お昼寝の時間としては最高なのに……。

 だって、大好きなお父様やお母様と引き離されて、5歳からお城で、お休みもなく毎日毎日、王妃教育を受けていたのだから――、そんな世界からは私はおさらばしたので、ゆっくり寝ていたいのです。

 もう、頑張ったし……ゴールしてもいいよね?


「私、貴族やめる」

「お嬢様!?」

「だから寝かせて……」

「貴族から籍を抜いたら、どうやって生活をするのですか!?」

「回復魔法で生計を立てます」


 私は途中の町で購入したケープを羽織ってから瞼を閉じる。

 あー、こういう惰眠って、すばらしいわよねと思いながら……。


「エリーゼ様!」

「あっ! 私のケープ返してっ! ないと寝られないから! まだ肌寒いから――」

「ダメです。それに貴族から籍を抜けたら、ルーカス様や、ルアナ様が悲しみます」


 お父様と、お母様の名前を出されて、私はハッ! と、してしまう。

 私が貴族をやめたら、きっと、お父様もお母様も、私が婚約破棄されたから貴族を止めるまで心が傷ついていたのかと勘違いしてしまう。

 そうなると、公爵家と王家との仲が非常によろしくない感じになってしまうかもしれない。


「そうね……貴族として、生活してきたものね。安易に貴族を止めるなんて、私達の生活を支えてくれている王国の民に失礼なことよね」

「分かって頂けましたか」

「ええ。私、少しだけ貴族としての作法を忘れていたのかも知れないわ」

「もう殆ど忘れていましたけどね」


 ウルリカが何か言っているけど、私は返してもらったケープを折りたたんで、髪をウルリカに整えてもらい馬車から出る。

 すると目の前には朽ちた大きな建物があった。


「えっと……。これって……」

「はい。目の前の館が、メレンドルフ公爵家が、ずっと昔に住んでおりました館になります」


 ウルリカの話を聞きながら、私は目の前の館の光景に目が釘付けだった。

 お化けでも出そうなくらい朽ちていて、建物には多くの蔓が絡まっている。

 しかもお庭の中も、色々な草や花がいっぱい生えている。


「これは……、お掃除が大変そうですね」


 到着早々、館を掃除することになり、一週間の旅行の間に、増えた同行者の冒険者の方や職人さんが一緒に手直しを手伝ってくれた。

 そして――、何とか住める部屋を確保したあとは、冒険者の流儀に沿って手伝ってくれた方みんなで宴会をして一日が過ぎてった。





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