#40 Lyrical Noise, Forever

つむぎさん


 先日の連絡、嬉しかったです。

 エルシャドの件、僕もやるせなさや怒りで不安定になっていたので、気持ちの行き所を紡さんが見つけてくれて助かりました。

 お門違いだなんて、僕は全く思ってないですよ。男に生まれた以上、目を逸らしたらいけない側面です。

 女性キャラにしっかり寄り添ったつもりで、実は全然分かっていなかった……みたいなこと、僕の過去作にもあるかもしれませんから。北城ほくじょう先生は僕にとっても師匠みたいな人ですし、これを機にじっくり勉強してみるつもりです。


 とはいえ。勉強と部活で手一杯になってきたので、小説はまたしばらく滞りそうです。相変わらずの見切り発車、よくないですね……


 ただ、先日お世話になったミュージカル、期待以上に良い手応えを感じています。学校でも紡さんがついててくれるような、そんな心強さと一緒に過ごせていますよ。


 和枝かずえ



 彼からの言葉通り。『影刃戦記』の更新は止まっていたし、メッセージの頻度は減った。とはいえ、たまにあるメッセージからは、私への信頼の強さがこれまで以上に伝わってきた。


 その筆頭が、四月半ばに送られてきたこのメッセージだ。



〉紡さん


 こんばんは、前からお話しているミュージカル企画についての頼みなのですが。

 どの話からでも、台詞でも地の文でもいいので、紡さんが熱を感じてくれた僕のフレーズ、挙げてみてもらえませんか? 急で変なお願いですけど、きっと紡さんの方が僕の強みを知ってくれていると思うので。


 和枝



 恐らくは台本や歌詞で行き詰まり、自分の過去作をヒントにしようと思ったのだろう。

 お安い御用、というより普段から好きなフレーズは書き留めていたのだ。手帳を開いて、すぐに打ち込んでいく。こんなに早く、こんなに多く返ってくるの、たぶん彼も驚いているだろう。


〉和くん

 頭を抱えるとはまさに今、そんなオーダーだったんですからね? ここまで性癖開陳パレードしたんです、ちゃんと歌に活かしてあげてください。



 打ち込みながら。自分の精神の根底、世界を捉えて言葉にする働きにまで彼の感性が浸透していると、改めて分かる。彼とどんな関係になっても、きっとこの言葉たちと生きていく、出会ったから生きていける。


「忘れないでください。君の言葉が、今日の私を駆動していること。

 君も信じてください。君の言葉が、大好きな仲間たちを歌で輝かせること」


 私だけじゃない。君が好きな人たち、恋では結ばれなかった「彼女」も含めて、君は歌と言葉で響き合える。


 彼もそう信じてくれているらしい、お礼の最後はこんな文だった。


「みんなといたから、あなたが見つけてくれたから紡げる歌です。

 ひとりひとり違う僕たちへの祝宴です。

 色を重ねて、光を集めて、全力で響かせにいきます」



 全部は分かり合えない、愛したぶんもすれ違いは怖い。

 それでも。私も彼も、その先へ進めている。分かり合えなかった、すれ違った、だからこそ見つけられた想いと祈りを、小説や歌に込められている。


 きっと大丈夫、この共演は絶えやしない。

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