転生したら好きなゲームの主人公だったので好きに振る舞ってみた。

霧嶋結楠

第1話 画面越しに推しがいた世界

私の名前は小泉茉莉奈。

自他共に認めるオタクである。

小さい頃からゲームやアニメ…それも美少女物が大好きで、大人になった今でもそれは変わらない…どころか、益々悪化の一途を辿っている。

部屋は勿論、玄関から部屋に至るまでの短い廊下も好きキャラたちのポスターが飾ってある。

どんなに仕事が辛くても、推しの顔を見るだけで元気が出る。

そう…全ては推しの為。推しに貢ぐために私は働いていると言っても過言ではない。


「今何時…ああ…クリスちゃんは今日も可愛いなぁ…」


時刻確認の為に目にしたスマホの画面へと表示されている推しの姿に小さく言葉が漏れた。

私の最愛の推し、クリスティーナ・ラインハルトちゃんは画面越しだけど変わらない笑顔を此方へ向けてくれている。


(…いや、変わってたらそれはそれでホラーなんだけど)


そんな事を思いつつ、今日発売のキャラソンCDを受け取る為にショップへと向かう。

初回限定特装版を予約済み、今日という日をどれだけ待ち望んだ事か。


(もうすぐ…もうすぐ会えるね、クリスちゃん…!)


心の声が漏れていたら気持ち悪いことこの上ないだろうな…そんなことを考えながら青へと信号の変わった横断歩道を渡ろうとした時、誰かの声が響いた。


「危ない!!」


ーーーえ?


何が…なんて言葉が口に出ることは無かった。

強い衝撃と共に意識が薄れていくのがわかる。


ーーーあれ…私、もしかして…轢かれた? いや、そんなことより……


-薄らいでいく意識の中でそう思ったのは一瞬、すぐに思考は闇に溶け……

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