第6話 意外な再会

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 配信が終わった後、俺と千冬さんがリビングのソファでくつろいでいると、千冬さんのスマホが鳴った。


 千冬さんは画面に表示されている名前を確認すると、嬉しそうにスマホを手に取った。


 友達だろうか?


『もしもし~。あ、見てくれたんだね! え? 今日?』


 チラッ


 千冬さんは電話で話しながら、俺のことを何度も見てくる。

 どうしてだ?


『じゃあ、またあとでね~』


 通話を終えると、千冬さんは俺の方に体を向ける。


「後で私の同期の子が葵くんに会いに来るって」


「ええっ?! 俺に会いに……ですか?」


「うん! さっきの私の配信見てたらしくて、葵くんの話をしてたから、興味が出たんだってさ」


「あー、そういうことですか。俺も千冬さんの同期に会ってみたいです!」


「そう言ってもらえてよかった~。私の同期もとっても良い人だから安心してね」


 千冬さんの同期……ってことは、兎野ウサの同期だよね。


 キャラクターの容姿は知っているけど、どんな人なんだろう。



「何時頃来るんですか?」


「えっと、夕方って言ってたと思う」


「オッケーです」


「来るまで何しようか」


「千冬さんの同期がどんな人なのか知りたいです!」


「葵くん、興味津々だね! いいよ!」


 千冬さんはタブレットを取り出すと、『バーチャライブ』のホームページに行き、兎野ウサとその同期の写ったページを見せた。


 そこには、兎野ウサと左耳の上にピンク色の花を付けたセーラー服姿の女の子、そして猫を擬人化させたような可愛らしい女の子のキャラクターが載っていた。


 この2人が千冬さんの同期か。


「この2人が同期ですか、可愛いですね」


「でしょ~? こんなこと言うの本当はダメだけど、リアルも可愛いよ」


 Vtuber界隈では、中の人のことを話したりすることはダメだと言われている。


 まあ、Vtuber本人たちが裏で話している分には問題ないと思うけど。

 ファンの人たちが話すのはご法度だ。


「どんな人たちなんですか?」


「この女子高生のキャラクターの子は、実際に女子高生なんだよ。たしか4月から高校3年生だったかな。配信しているときは元気いっぱいの女の子って感じの子なんだけど、実際はおとなしい子だよ」


「キャラを作ってるってことですか?」


「んー、作ってるっていうか、配信を始めるとスイッチが入るみたいな? そんな感じらしいよ」


「凄いですね」


「そして、この猫の子が心地良い声してるんだよね。この子は大人っぽい感じの子で元気いっぱいの子だよ。心地良い声してるから、よくASMRの配信とかしてるよ」


「そうなんですね。会うのが楽しみになってきました。聞いた感じだと仲良さそうですね」


「うん! コラボ配信のないオフでも会ったりするからね」




 千冬さんと同期の2人は本当に仲が良いみたいだ。

 そのうちの1人は俺よりも年下なんだな。

 高校に通いながらVtuberとして活動しているなんて、凄いな。きっと、毎日忙しくしているんだろうな。



 俺は千冬さんの同期が来るまでの間、ソファでくつろぎながらスマホでYooTubeを開いて兎野ウサの動画を見ていた。

 本人がすぐ隣にいるとはいえ、俺はファンなのでこれが日課なのだ。


 千冬さんは顔を真っ赤にして恥ずかしそうだった。


「葵くん恥ずかしいよ~」


「俺、『ウサ民』なので!」


「えへへ、嬉しいけどさ~。自分の動画を隣で見られるのは恥ずかしいよ~」


「それじゃあ、後でにしますね」


 俺はスマホをポケットにしまった。


 恥ずかしがっていた千冬さんは俺より少しだけ年上のはずだけど、まるで幼い子供が恥ずかしがっているみたいで可愛かった。

 千冬さんは時折、そういう姿を見せてくるということが同居を始めて数日だけどわかった。


 俺がそんなことを考えていると、インターホンが鳴った。


 ピーンポーン


 恐らく、千冬さんの同期の2人が来たのだろう。

 さっきまでは緊張していなかったのに、急に心拍数が上がってくる。


「失礼します」

「久しぶり~!」


「お~2人とも元気にしてた~?」


「うん! 私はいつも元気だよ~。お、その子が噂の子かな?」


 茶髪ショートヘアの女性が俺のことを見て自己紹介を始める。


「私は、『猫井ねこいミケ』として活動してる白井雪しらいゆきです。よろしくね!」


「は、はい。俺は夏野葵です、よろしくお願いします!」


 この人が猫の擬人化のVtuberとして活動している人か。


 そして、次にもう1人の子も自己紹介を始めたのだが、俺は驚きを隠せなかった。


「私は、『桃色花ももいろはな』として活動している柊木六華ひいらぎりっかです。よろしくおねがいしま……ッ!?」


「え……!」


 彼女もお辞儀した状態から顔を上げたときに俺に気づいたようで驚いた表情みせた。

 それを見ていた千冬さんと白井雪さんが不思議そうに聞いてくる。


「2人とも知り合い?」


 俺は彼女のことを知っていた。


 彼女も俺のことを知っている。



 彼女は、俺が通っていた高校の後輩だったのだ……!


 彼女は同じ委員会に入っていた。それもあって後輩の中では1番と言っていいほど仲の良い後輩だった。





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