親にも親友にも見捨てられた俺、大人気アイドルVtuberに拾われる。
夜兎ましろ
第1話 見捨てられた俺、大人気アイドルVtuberと出会う
「あんた、高校卒業したらこの家から出て行ってね」
俺――
もちろん俺は反論した。
「家から出て行って、ってどういうこと?!」
「そのままの意味だけど? この家を出て、自分で稼いで生活していきな」
「え……? なんで……」
「なんでって、私にあんたが必要ないからよ。あんたがいると金だけが減っていくから邪魔なのよ」
正直に言うと、どう反論してもこうなることはわかっていた。
俺の母親は一般的に見てクズだ。
お父さんと離婚してから、色んな男の人をとっかえひっかえしていた。稼いだお金のほとんどを男の人と遊ぶことに使っていた。
俺の家庭での環境は最悪だった。
育児放棄とまでは言わないが、それに近かった。
むしゃくしゃしていると、俺に手をあげることもあった。
俺は明日にはこの家を出ることになるだろう。
明日、親友に少しの間だけ泊めてもらえるか聞いてみることにした。
*****
俺は学校に着き、教室へ向かった。
教室に着くと、そこには親友の
俺は昨日の出来事を伝えて、どうにか泊めてもらえるにしてもらおうと思った。
だが、現実は残酷だった。
俺が声を掛けようと翔也の近くに歩み寄ると彼はとんでもない言葉を口にした。
「やっと卒業か~、これでお前とも離れられるぜ~」
「……え?」
俺は耳を疑った。
「いやぁ、毎日お前に付きまとわれて正直、ウザかったんだよね」
「…………」
「じゃあな」
俺は何も言い返せなかった。
親友だと思っていたのは俺だけだったみたいだ。
俺たちは、親友以前に友達ですらなかったのか……。
俺はその後も魂が抜けてしまったように先生たちの話は上の空で卒業式を終えた。
「どうしよう……」
俺は卒業式を終えた後、そんなことを呟きながら公園のベンチに一人で座っていた。
ポケットからスマホを取り出し、動画配信サイトのYooTubeを開いて、俺が最近ハマっている大人気アイドルVtuberの
Vtuberは、主にゲーム、歌、雑談などの配信をYooTube上で行っている。
兎野ウサは、可愛らしい水色の髪色で頭にウサ耳がついている可愛らしいVtuberだ。彼女はゲーム配信をよく行い、何か特別な日には歌のライブ配信を行っている。
彼女はYooTubeで140万人以上の登録者数を誇る。ここ最近、一番人気があるVtuberだ。
俺は彼女のゲーム配信のアーカイブを見ていると、彼女の楽しそうにゲームをする姿に少しだけ気が楽になったような気がする。
不思議と俺は涙を流していた。
自分でもどうしてかわからない。でも、何故だか涙が止まらない。
そんなときだった。
俺の背後から声が聞こえてきた。
「君、大丈夫?」
背後を振り向くと黒髪ロングの可愛らしい女性が立っていた。
俺は彼女の声に聞き覚えがあった……というか、今までスマホからその声が流れていた。
「兎野ウサ……?」
「ふぇ!? なんでわかったの!?」
彼女はうろたえて可愛らしい動作をする。
そんな彼女を見て、俺は少しだけ笑みを浮かべた。
彼女はすぐに冷静になり、再び最初の一言を投げかけてくる。
「大丈夫?」
「大丈夫……ではないかな。辛いことがあって……」
彼女は俺の隣に座り、真剣な眼差しで俺の顔を見つめる。
「嫌なら無理にとは言わないんだけど、もしよかったら何があったのか教えてくれないかな?」
「うん」
俺は彼女にすべて話した。
母親に家を追い出されて行く当てがないこと。
親友だと思っていた人にも見捨てられてしまったこと。
俺がすべて話すと、彼女は号泣してしまう。
「うぇ~~~~~~ん!」
「え! なんであなたが泣くんですか?!」
「聞いてたらこっちまで悲しくなってきちゃって」
「あなたは良い人そうですね」
彼女は涙を拭うと、とある提案をしてくる。
そして、この提案は俺の人生が一変するような提案となる。
「君、名前は?」
「夏野葵です」
「私は、
「まあ、はい」
「そこで提案なんだけどさ」
「……?」
「Vtuberにならない?」
「え!?!?」
彼女は俺にVtuberにならないかと提案してきたのだ。
俺は混乱した。
そもそも俺にはVtuberになるための機材をそろえるのに必要な金がない。
「俺は今、全くお金をもっていません。だから、その提案は……」
俺が彼女の提案を断ろうしたとき、彼女は俺がVtuberになること以上に考えもしなかった提案をしてくる。
「お金は関係ないよ。私の使ってる機材貸すから、問題なし!」
「それはどういうこと……?」
「だから、私の家に住めばいいんだよ! 同居だよ!」
「えええええ!?!?」
俺は驚きのあまりあたふたしてしまったが、彼女の次の一言で俺は彼女が冗談で言っているわけではないことがわかった。
「私なら、葵くんの母親や親友だと思っていた人みたいに葵くんを見捨てたりしない。だから、私と一緒に来ない?」
俺はその言葉を聞いた途端にまた涙が流れてきた。
涙を流しながら俺はこくり、と何度も頷いていた。
俺は今どこにも行く当てがないんだ。それなら彼女について行っても良いんじゃないかと思った。
彼女の差し出した手を掴んで、彼女の家――これからは二人の家になる場所に向かった。
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