巡りめぐりて

 ウタカタンの者は誰だってたそがれ川の彼方に旅立つ。それがいつかは、みんな知らないけれど、知っている。


 そしてぽかりと空いた穴を埋めるように、どこかの誰かが流れ着くと、誰もがまた平気な顔をして毎日を送るのだ。まるで川の流れに石を投げ込んでも、新しい流れが波紋をなだめてしまうように。


 巡りめぐりて、なにもかもが繋がっている。


 サルヴァドールは舟の上から遠ざかる仲間と水車小屋を見つめ、ひとりごちた。


「私は欲張りらしい。どんなに悔いがないと思っていても、やっぱりあそこに戻りたくなるなんて」


 たそがれ川の水音が、優しく彼をなぐさめる。


『光るキノコに、揺れる舟、なんなら寂しい孤独も道連れに。あなたの幸せどんなもの』


 サルヴァドールが胸に手をあて、歌うように答えた。


「ゆかいな声に、優しい目、なんなら愛しい温もり道連れに。わたしの幸せここにある」


 ここにあるけど、そこにある。

 ここにないけど、きっとある。


 ウタカタンは、そういうものだから。

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たそがれのサルヴァドール 深水千世 @fukamifromestar

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