お茶でもいかが
ウタカタンの者ならみんな知っている。誰もがいつかはどこかへかえるのだと。誰も知らない、どこかへ。
その旅立ちの始まりは、この『たそがれ川』なのだ。
リリーが客のリストノートを開くと、じんわりヨナじいさんの名前が浮かんできた。
「今日はあなたの貸切ね」
そう言うとヨナじいさんを暖炉の前の安楽椅子に案内した。
「いらっしゃい、ヨナじいさん。ここで薪が爆ぜる音を聴いていてちょうだい。川守たちが送り出す支度が調うまでね」
ヨナじいさんがにっこり頷く。
「わかっておるわい。どうしてわかっているかはわからないがの」
「じゃあ、時がくるまで私とお茶でもいかが」
「それもよいが、できれば酒の相手が欲しいわい」
「ぶどう酒なら喜んで」
「結構、結構、酒なら結構」
酒好きのヨナじいさんはけらけら笑った。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます