007 No Time to Die ー21.10.1.
監督:キャリー・ジョージ・フクナガ
2021年
「JAMES BOND WILL RETURN」
待ちに待った一年半余り。
いったい何度、お預けを食らったことか。
のっけの俯瞰映像から、アレ、これはウェットだぞとビシバシ感じた本作。
いつものクールかつソリッドでキレキレのアレじゃない、ということで、
ただごとじゃないと胸が騒いだ。
それもそのはず、引退したボンドの行動の大半にバックアップはナシ。
場合によっては丸腰に近く、自身の身さえ守れば済むというわけでもないハンデ戦の連続。
そう、いつもの余裕がないというか、
今回のボンドは全体的に押され気味なのである。
悪を食う悪に、なんとなく時事ネタを連想させるトンデモ秘密兵器。
(とはいえ、撮影時はきっとコロナなんて誰も想像していなかったろうに。だからの公開延期も納得)
Qはコメディー担当に全フリなうえ、北方領土にロシアのマッドサイエンティスト。
ちょっと和風テイストもあって、最後は国際問題必至の海域侵犯やらなんやら。
これまでにないエンタメ重視のスケール感と、かつての定番の復活、総ざらえに、
ああこれはリセット回なんだな、と思った。
「ダニエル」ボンドが積み上げてきたものを崩しつつ回帰、
次にバトンするためキャンバスを白紙(ニュートラル)に戻しつつの、
オールスターによる「お別れ会」なんだな、と。
そして迎えたラスト。
正直、こんなに寂しい気分になるとは思いにもよらなかった。
(隣の外国人のお兄さん、ずびずび泣いてたし)
映像はこれまでのソリッド感が薄まって、暖か味のある雰囲気が印象的だ。
それも孤高のボンドが、そうでなくなった世界とだ思えばよくできている。
(今回はよく笑うし)
またりカット割りではなく、ぐるんぐるんカメラを回して撮るアクションシーンが秀逸だった。
あれ、やり過ぎると何がどうなっているのか分からなくなりかねないのに、
テンポ、構図(視線誘導)が本当に良くて、
状況にほうって行かれることなく一緒にジェットコースターに乗っているかのように楽しめた。
カメラマンもスタントもグレイグ氏も、ひたすらグッジョブである。
ダブルオーのひとつの歴史が終わった。
もう取返しはつかないが、これで良かったんじゃないか。
と、全作を通して振り返る、
かつ次回にこうご期待の壮大なリセット回として、成功しているのではないかと思っている。
ジェームスボンド・ウィル・リターン。
その日をまた待ちたい。
本作はかなり意見が分かれると思う。
それはデキではなく、鑑賞者の中にあるイメージとのすり合わせについてだ。
そういう点でこれまでと同じ、を期待すると裏切られるだろう。
しかし新しい物を見たいのであれば、受け入れる受け入れないは受け手の解釈の問題も大きいと感じている。
また同質で集まる身内の賛同だけでなく、
より数多くの多様な観客を相手にすればするほどノーの声が上がってくるのは当然で、
「竜とそばかすの姫」でもあったように批判があるということこそ身内の枠を超えて多くへ作品が届いた証、ホンモノともとれる。
歴史あるビッグタイトル、その人気シーズンの最後なのだからつまり何が言いたいかといえば、
ファンとしては喧々諤々、もっと物議かもして盛り上がれ!
(まさに「りゅうそば」)なのである。
ということで面倒臭い絡みコメントや、アンチコメが来たとして、むかつくことなかれ。
それはまったくもって普通に生活する限りでは、
著者となんら触れ合うことのできないような遠いところまで作品が届いたという証拠なのだから。
むしろその逆ばかりの方を、心配した方がいい。
海は荒く広い。
プールは優しく、そして狭い。
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