イン・ザ・ハイツ ー21.8.3.
監督:ジョン・M・チュウ
「重い現実をラテンのビートが彩る」
日本にいるせいか「移民」という言葉がピンとこなかった。
だが本作をみるうちにも、縁遠かった言葉が身近と迫ってくる。
そんなラテン系移民が住まう町を舞台にした群像劇が本作だ。
華麗なラテンミュージックに合わせて、全編ミュージカル仕立てと華やかに構成されている。
貧困や差別に喘ぎ、不法移民もいれば、だからこそ尊厳を持って日々を送る登場人物たちはひたむきだ。
そこにミュージカルながらリアルを感じるのは、作品自体が社会問題を真正面から扱うべく企画されたものだからだろう。
また移民としてやってきたところで二世、三世となればもう、本人にとってはそこがホームタウンのようなものである。
だがそれでも「移民」とくくられるとき彼らのアイデンティティに、
日本人として日本に住む限り、在れば得られるようなものと違い、
自ら掴み取らねばならないタフさを、ハンディキャップを感じて止まなかった。
なるほどこれが「移民」か、と。
ただ中で奮闘する姿へはだからして、応援せずにはおれなくなる。
同時に「幸せに生きる」とはどういうことなのか、についても考えさせられる1本だった。
ミュージカル映画に思うことのひとつに、感情と動作の関係がある。
歌として心情を吐露する一方、ダンスという身体表現も欠かせない。
そして楽しいと歌うから楽し気にのみ踊るのかといえば、
楽しいと歌いながら憤るように踊るときも、まどろむように踊るときもある。
逆に苦しいと歌いながら溌溂と踊るときも、希望にあふれ踊るときもある。
物語でもやはり、単一な情報をストレートに繰り出すのみならず、
複雑さが生む繊細を見逃すことはできないと思うのだ。
なおさら言葉で展開されゆく小説界隈は、動きがあるようでないものをしばしば見かける。
これは説明であり、表現といえるのか。
自身は問うことにしている。
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