沈黙 サイレンス ー17.2.14.
監督:マーティン・スコセッシ
「フェアな描写が生む説得力」
遠藤周作の同名小説、ハリウッド版。
日本人でもなく、キリスト教信者でもない人が見ても耐えうる細かでフェアな描写が、文化と文化の対立と軋轢を生々しく浮き立たせる一本。
また二時間半の長丁場を、全くもって疲れさせず感じさせない物語の運びと映像の美しさ、一転してドライな残酷さが、たとえ宗教に興味がなくとも生きた人間の葛藤を十分に味あわせてくれる作品と見る。
さて、誰の言い分にも理不尽さはなく、
ないからこそ相容れない時、試されるのはおそらく背負ってきた文脈よりも個人個人の行いや判断だろう。
ただその責任を負いきれない時、自ら判断を下した相手を「神」と呼んで、
許しを請うのだと感じた。
原作と共に浸ればなお、普遍的探究に旅立てるとおすすめしたい。
高校生の夏休み、ハマって読み続けた遠藤周作。
「海と毒薬」も当時、目を開かせてくれたと記憶するが、一番は「死海のほとり」だったりする。
キリスト教が大きく登場する本作だが、いかんせん江戸時代の物語である。
それをかのスコセッシがハリウッドで、となれば、一体どうなっているんだろう、と単純に興味を持った。
同時にアメリカ産ならではのステレオタイプな何かが潜んでいるに違いない、と身構えたが、それがどっこい、まったく違った。
クリントの「硫黄島からの手紙」もそうだが、最近になってちょくちょく現れる「ちゃんとした日本」にリスペクトされていることを感じるし、リスペクトある製作陣をリスペクトしたい気持ちに駆られる。
果たして遠藤先生は、自らの作品がハリウッドで映画化されることを想像できたろうか。
いまでこそ小説といえば映画の原作に、とメディアミックスは常套だが、
あの頃、小説は小説で、いまほど前提はなかったと思える。
そういう敷居が取り囲んでいたようにも思う。
良いことなのか、悪いことなのか分からないが、少なからず遠藤先生はまさか海外での映画化こそ考えていなかったろうと思う。
そんな小説の立ち位置の違いにもなんとなく、思い馳せる一作だった。
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