進撃の巨人 ATTACK ON TITAN ー19.10.9.

監督:樋口真嗣



「独立、だからこそ完成している作品だと思えた。」

原作未読。

原作付きの映画だが、必ず紐づけしなければならない理由が見当たらない。


と思うほど原作を全く知らないせいで、作品単体としての仕上がりの良さにのめりこめた。物語にも画面にも既視感がなく、貴重。

それでいて説得力があり、観ていて気持ちが途切れない。

今の心境としては、原作は読まなくていいと思えるくらい一つの作品として完成していたように思う。


監督は好物だったガメラシリーズの樋口監督と後で知り、作中あったリアル感、臨場感に納得する。

進撃ファンというより、樋口ファン向け映画ではなかろうか。

続きも見ようと思う。楽しみでならない。


それにしても気づいたら、ナチュラルに人の尻を次々見ている自分にビックリ。



これを書いている地点で2021年夏のため、なかなか細部までをどうこう言えなくなってきたが、

ヘンテコな世界観(人を食う巨人が壁の向こうから襲ってくる。なぜか裸)にとにかく説得力がある。

冒頭、村が襲われるシーンの絵の密集加減、

情報が多く詰め込まれて見る者を翻弄することでパニックへの臨場感を煽る、

ようなシーンにもかかわらず、何がどうなっているのかしっかりピントの合った流れが心地よかった。

あそこで損じるとのち巨人に対するリアルな恐怖が抱けないため、闘う主人公らの悲壮で必死なところが上滑りしてしまうのだからこれは私にとって、本作の成功を裏付けているようにも思える。

おかげでのちの展開にも乗っかることが出来たし。

ところで原作ファンはかなり厳しい意見を投げていたようだが、

まんまを再現する意義と、映画版ならではを堪能することについて考えてしまう。

スカヨハ版「攻殻機動隊」は原作のキャッチーなシーンやエピソードを完全再現、器用につなぎ合わせて新たな物語として作られていた。再現されたシーンの完成度はとにかく高く、しかしながら物語としてはすでに知っている流れをなぞる所もあり、ちょっと物足りなかったところが何とも言えない。

ビジュアルで驚かせておしまい、のような。

慣れて見飽きるとそれまで、のような。

本作はどうも逆らしく、いつも焼きそばに入れるキャベツで今日はロールキャベツを作りましたのような具合で、この新鮮さが原作ファンには受け入れられなかったように見聞きしている。

もしも、絶対あり得ないけれど自身が原作者で映画化されたとき、作品がロールキャベツに仕立てられていたらどう思うだろう。

よほどヒドイ、とショックを受けない限り、自分の書いたもののようで絶対思いつかなかったろう展開を他人事と楽しめるような気がしている。

その方が気が楽だし。

いずれにせよ、スキにいじられてもOKと思えるのは、製作サイドとの信頼関係ありきなのかもしれない。

(著作権は出版社にあるだろうから、原作者が信頼関係築く相手を選べるような権限はなさそうだけれど)

観客にはまずもってその関係が築けるはずもないのだから、文句が多くなるのだろうかな、と思ってみたり。

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