インセプション ー19.10.31.

監督:クリストファー・ノーラン



「まるで精密機械!」

公開当時、劇場で鑑賞し、TVでも鑑賞し、そしてアマゾンビデオでも見てしまった。

だが何度見ても飽きない。知っていてもハラハラする。そして見るほどに、

物語と、「共有された夢の階層」を下りゆく中でのサスペンス要素や、

構成、ギミックの絡みの鮮やかさに驚く。

そう、まさに精密機械か。


誰もが知らぬうちに今を信じ、次を決断している。

そんな「知らぬうち」の時間を夢の中(深層心理)ととらえるのか、

それもまた現実の一部ととらえるのか。


「目覚めている時」があってこそ切り分けられるのだとして、だがしかし明確な境界線はだれにも引けず。

なら果たして今、私が見ている世界はどちらなのか。

観終わったあと妙な不安と希望に覆われる本作は、現実と私の関係についても否応なく考えさせられる名作と推したい。



よく考えるとこの作品、直近で書いた作品の元ネタなのかもしれない。


さておき、「テネット」でも記述したように、時間の扱いが面白味のひとつである本作。加えて、心を最深の深層心理まで階層分けするという、それはファンタジーだ、と言いたくなるけど萌えずにおれない設定もついている。

このあたり、攻殻機動隊(原作)のブレインダイブを連想させて止まなかったり。

そして深層心理は映像上、夢と表現され、夢は無意識を司り、無意識に「意志」の根拠は眠ると設定されている。

この学問上、言葉では言い表された状態を映像化できる具体(構造)へ振り分けるセンスがたまらない。

脳、意識、心にはまっていた時期があった身としては、どんどん深部に降りてゆき、その人を動かす根拠がどう映像(象徴)として示されるのかドキドキが止まらなかった。

回り続けるジャイロと知った時の衝撃たるや。

センスにベタぼれ。

(眠っている間に見る夢が壮大なれど、数時間の睡眠中に起きる出来事と、階層ごとに時間の進みが違うという発想も、本当にセンスの塊)


過去「12モンキーズ」もうまいな、と惚れた作品だったが、久しぶりに心ときめく作品だった。

そして本当にいい作品には続編がいらない。

蛇足と感じるほど、すでに仕上がっているからである。


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