白いダンボール箱

千羽羽

単発です


白い段ボール箱......

普通の人たちにとっては

新生活の始まりの証だろうけど、

私は幼少期から

親の都合の引っ越し続きで苦手だった。


これはそんな私、金沢穂乃花が白い段ボール箱が少しだけ好きになった日の話





普通の人たちの何倍の引っ越しを経験した私だったけど、

高校に入る手前に父が一軒家を買って

やっと安住の地が出来たとほっとしたある日、

聞きたくない社名と共にドアチャイムが鳴った。


ピーンポーン


「すいませーん!アルテ引っ越しセンターです!」

引っ越し業者……?なぜ私の安住の地に......

そう思いつつ私は母を呼んだ。

「お母さん!アルテが来た!」

「ハイハイ……お疲れ様です」


――母と引っ越し業者のやり取りを盗み聞きしていると

どうやらこの家に搬入するようで、

私の頭は瞬く間にはてなマークで一杯になった。


引っ越し業者が荷物を取りに行った瞬間に母に聞いた

「お母さんこの家に誰が来るの?」

「昨日新潟からこのみちゃんが来るって、

言ったじゃない!

白い髪の社長令嬢!」


このみ……?誰だその子……

記憶を遡りつつ適当に受け答えしていると、

母が突拍子も無いことを言った。


「あっそうだ穂乃花!東京駅までこのみちゃん迎えに行ってくれない?

お母さん買い物行かないと行けないから時間ないの」

「えー!東京駅まで?面倒くさい……

第一!顔覚えてないし」

「大丈夫!穂乃花の髪、特長的な銀髪だしすぐに分かるわよ!

余分にお金持たせるからそれで美味しい物買って来て良いから……ね?」

「うー……そう言われたら……」

全く……この人は人をやる気にさせるのが得意だ……


赤い電車とオレンジと緑の帯の電車を乗り継いで1時間

日本の大ターミナル駅、東京駅に降り立ち

新幹線ホームへと歩き出した

「疲れたぁ!!おしり痛い!!

首都圏の電車の椅子やっぱり硬い!!」


屁理屈を言いつつ入場券を買い

乗り換え口に近いエスカレーターを登り

売店で買ったパンを齧りつつ新幹線を待った


「まもなく二十三番線に

とき三百十八号が参りますーー」


白い巨体が速い速度で入って来て

ピタリと目の前にドアが止まった

そして目の前のドアが開き……長い銀髪の少女が現れ

私に話しかけてきた


「久しぶり!穂乃花ちゃん!」

「久しぶり……このみちゃん?」

「えー……私の事忘れちゃったの?」


ーーホントは引越す時覚えていると情が出ると

辛いから覚えないようにしていたけど......

彼女を傷つけないように一つ嘘をついた

「うん......ごめんね?」


彼女は、ああやっぱりという表情を見せて

「やっぱり……まぁ私、髪が白いの以外は

どこにでも居る顔だもん

忘れてて当然だよ」

と悲しそうに言った

「ごめん……!

そこまでショック受けるとは

思わなかった!」

「あはは!うそうそ

演技だよ演技」

「なーんだ…… びっくりしたぁ……」

「昔から変わってないなぁ……」


「――ところでさ、

多分始めて首都圏に来ただろうし

行きたい所あったら案内するよ?」

「んー……って所」

「山下公園ね……分かった

東海道線に乗り換えようか」

「うん」


私達乗り換え改札を通り

母に言われた通り

美味しい物を買ってから

山下公園へと移動した


「ついたぁ!!」

「綺麗……」

――目の前に広がる

ビル街と赤レンガの倉庫、

係留されている元郵便船

そして……国連UNの旗を掲げる艦船達

これがの日常だ

「本物の国連艦隊だ……」

「大きいねぇ……」

――それから何時間たっただろうか……

たわいのない話をしつつ

気になっていた事を聞いた

「そういやさこのみちゃん

ここに来たのって高校でしょ?

何処に行くの?」

「ん?金沢国連記念高校」

「……私と同じだね!」

「同じクラスになれば良いね!

穂乃花ちゃん!」

「うん!」


――今までダンボール箱に

記憶を詰め込んでたけど……

いつかは開けなきゃいけない

ほのかちゃんが来たのは

良い機会なのかもなぁ……

このみちゃんの

綺麗な髪に見蕩れつつ

お昼ご飯を食べに

家に帰ることにした

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白いダンボール箱 千羽羽 @tiwawa_1027

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