青空倶楽部(スカイクラブ)
@nirotomakut
第1話
「地球が終わります」
その言葉を真面目に言ってる奴を見たのはそれが人生初である。いや、最初で最後かもしれない。そう何回も聞くような機会があればそれは言ってる奴の頭か周囲の状況かどっちかがやばい。
とにもかくにも、そんな世間で言ったら笑い者になるようなカタストロフ宣言を大真面目に聞いたのには、次のような経緯がある。
とある日の放課後、俺はいつも通り、部室のドアを開けた。
「失礼します」
「あ、ヒロくん。遅いよもー」
中にいた部員の1人が(いやそもそも他の部員は誰も居なかった)、俺に声をかける。
軽く天パがかったショートの髪先を揺らし、くりくりとした大きな瞳で俺を見たそいつの名前は、
因みに俺は
…余談はさておき。
「遅いも何も、基本する事ないんだし、いつもお前のがルーズじゃん」言い返したが、
「遅刻してる暇なんてないよ!」
「いやだから遅刻の定義が」
聞いてねえ。そして暇があるなら遅刻はしない。
「今地球存続の危機について話し合ってたんだから!」
「えっそんな重い議題だったの?」
「もちろん嘘なんだけど」
「だろうな」1人でやる話し合いなんて聞いた事もねえよ。
「ノリがいいな」ふとここで、聞き慣れない声がした。…聞き覚えはある。が、どこから?そして何故こんなにくぐもって…
「ていうかいい加減出してくれ」
「うおびっくりした!」
その声は俺の隣から…正確にいえば、俺の隣の掃除用具ロッカーから聞こえてきた。
「あ、ごめんごめん」
自然な感じでロッカーを開けると、中から人が出てきた。
「おい」
ていうかこいつ。
「
本日明朝。
「初めまして、愛代
…それっきり黙ったままの転校生に、クラスがザワつく。
「あれでレイラ?」「超可愛くない?」「でも目つき悪いよね」「髪なっが」ヒソヒソと飛び交う第一印象に、先生が慌てた。
「…それだけ?もっと何かあるでしょう」
「何か、とは」
能面のような真顔で首をかしげる転校生。
いや、質問返しにするな。
「それは…自分で考えて下さい。趣味とか、好きなものとか」
愛代はしばらく黙って、
「自然が好きです」
思ったより普通の答えが返ってきた。
「あと非常事態が好きです」
と思ったけど普通じゃなかった。
そして目の輝かせ方も尋常じゃなかった(顔は一切笑わないくせに)。
「…?(汗)」
困惑する面々。
「イレギュラーな事態は人生には欠かせないスパイスです」
うわなんかイタイけど笑えないこと言いだしたぞこいつ。
お前は人生に何を求めてるんだ。ていうかせめてニコリとしてくれ。怖い。
ややあって、ハッと腕時計を見た先生が、おずおずとしながら、「あ、ありがとうございました」と白けた場を打ち切った。おい先生が引いてどうする、先生が。
…とまあ、ちょっとした噂レベルの自己紹介をやってのけたのだった。
「えー何それ楽しそう。混ぜてくれればよかったのに」
「お前他クラスのホームルームに突入するつもりか?」
…いや待て、なんか流されそうになってたけど、なんでここに愛代が?あとなんでインロッカー?
スカートの埃を払って手近な椅子に座った愛代を横目に、有羽は言った。
「そうそう、真面目な議題ってのはホントなんだよ。なんかお客さん来てるし」
「それを先に言えよ」客人そっちのけでコントやってる場合か。
「よしそれでは各自自己紹介に移りましょう」
「話逸らすの下手すぎかお前」前置きのコントが長すぎてなんかもう精神的には事後紹介感だよ。
「じゃーまずヒロくんからで」
「流れ的にお前だろここは」
「いや普通に客の方から自己紹介をさせてくれ、緊急案件なんだから」半ば突っ込み感覚で名乗ったのは愛代だ。
俺と有羽も今回はそれに乗り、大人しくなる(いや、俺は元々エキサイトしてないけどな?)。
「…えーとそんなに改まらなくて良いんだが」
「今更弱くなるな、早くしてくれ」
レイラは立ち上がって、反らした胸に片手を当てた。
先程とは打って変わった、凛とした声で。
「___人類最後の生命線、世界最後の名探偵___愛代
その動作には、どこか人を惹きつけるものがあった。
が、やっぱりイタいにはイタかった。
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