BLOODY HUNTER

上島向陽

序 『血まみれの賞金稼ぎ』

 かつて男がいた。


 男は騎士だった。


 二十四歳という若さで近衛騎士団長にまで登りつめた。


 男の名はラドリッシュ・バーンズ。


 紅い髪に紅い瞳を持った長身の男であった。


 彼は遺跡から発掘された火の鳥の紋章をあしらった真紅の刀身を持つ長剣を国王スタインから譲り受けた。


 その剣と共に彼は『紅の騎士』の称号も与えてもらった。その称号は同時に『最強の騎士』の証しとなった。


 スタイン王はラドリッシュを信頼し、彼もまた王を心より尊敬していた。


 しかしその数年後、ラドリッシュは国王を殺害した。


 国王より譲り受けた紅の剣を王の胸に突き立てて。


 この瞬間からラドリッシュ・バーンズは『最強の騎士』から『最悪の狂騎士』と呼ばれるようになり、彼の首には数億の賞金がかけられた。


 だが誰も。


 そう、誰も彼を捕らえることは出来なかった。


 彼はまさしく最強であったから。


 賞金は瞬く間に上がっていき、ついには『星系最高金額の賞金首』となった。


 それでも彼は捕まらない。


 それどころか彼が賞金首を狩り出した。


 おそらくは逃亡の資金を稼ぐためであろう。


 いつしか彼はその容姿から『ブラッディハンター・血まみれの賞金稼ぎ』と呼ばれた。


 だが彼がなぜ国王を殺害したのか?


 それは百年以上経った今でも謎のままである。

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