6月14日 小倉トーストと腐った味噌汁

 今日は起きた時から怠い。

 普段は米とパンを食べなければ空腹なのに、パン一枚と餡子を乗せるだけ。体温を測れば37.4。


 吐き気はしないが、あまり体調は良くはない。生ゴミの饐えた臭いも、あんこの乾ききった味もするから、大事でもないらしい。

 上司に連絡してたら、テレワークに切り替えて多少働く。


 幸い五体満足だ。怒られる話だが、辛ければサボれば良く、サボる前にやることの算段さえ整っていれば、さっさと終わらせて寝ればいい。


 上司に休みの連絡を入れる練習。今日はそんな日だと思いながら味噌汁を覗き込んだ。思い切り白い膜のカビが生えていた。腐敗臭は、ここだったらしい。失敗した。夏場に汁物は止した方がいい。


 腐敗臭とは、どうしてか甘い香りがする。


 先述したが、祖母の香りがそれであった為、慣れ故に我慢できないことは無い。ただいるはずの無い者がいる。

 その妙な不快感は拭えないが、良くも悪くも長居出来ないことはない。小さい頃すぼんだ口を開いて、病院に行くか、何か食べたい物はないか、そう尋ねる姿をふと思い出してしまうだけだ。


 あの臭いは、何故ああも甘いのか。

 熟れた実の透き通って、どこか粘り気も孕む鋭利な湿度。

 それが部屋中に差し込んでいる。慣れているから、とは一言で説明出来ないほど、この臭いは原始的に馴染んでいる。

 溝は悪臭極まりないが、何故だろうか。そんなことを考えながら、味噌汁の鍋をよく洗う。念入りに。胞子を根から削ぎ落とすように。


 腐った物は酸味、それを味わうと人間は危機感から吐き出す習性を持つ。つまりそれは、体が「これは毒性がある」と認識しているからだろう。

 だとしたら、腐敗臭という物に抱くものとはまた別かもしれない。いなくなってしまった。祖母の清拭をしながら、私はそう思ったのだ。


 それが今も続いているなら、死の危機感を持たない、曖昧なままになるのだろう。


 それはそうと、味噌汁を腐らせて、体調も芳しくないのだから、今日の献立は困りものだが。まあ、仕事をしながらでもドリンクでも飲みながらタスクをこなそう。今から昼食を摂るけれど、今日は何も書けない。これでいいや。

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