魔法少年凜音
冬
第1話
ほうきに乗った子どもたちが飛び交い、ふわふわと魔物が浮いている。そんな不思議な状況で大人達はスーツを着て電車に乗る。
魔力が使える人間からすれば可笑しくてカオスな状況だった。
こんな魔力が溜まった街に一つの小さな学校があった。
魔法学校では無い、魔力が無い人間からすれば、ごく普通のよくある学校だ。
俺は周りの見えるはずの無い魔物や魔法使いを無視して歩く。
そして都合のいい事に僕が近づくと魔物は道を開けるか消えた。それを面白く思い魔物を片っ端から消していったこともあった。
だがある日、魔法使いのお爺さんらしき人に呼ばれ「消さないで欲しい」と下手に頼まれた。その人の顔には恐怖が滲んでいた。
怯えその人の使い魔達も、壁ギリギリの場所にいた。
「できるだけ気を付けるよ」と僕は言った。
相手はホッとしているようだった。
それはこのオレンジのような赤毛のせいで怖がられてるんじゃないかとちょっと前までは思っていた。
「何でそんな髪の毛が赤いの?」「赤いっていうかオレンジじゃね」
好奇心に駆られた同級生が絡んでくる。中にはからかう様な響きもあった。
「さあね、オシャレでしょ?」と軽く笑う。
美少年の笑顔に女子は赤くなり、男子はからかうつもりが、軽くあしらわれた事にたじろいだ。
(つまんないなぁ)
転校して好奇心の次は友達づくり。友好的て話し掛けてくるので友達を作るのは他安かった。
「莉音君、わかんない~」「教えて」
周りに女子が集まってくる。
面倒臭いと思いながらも対応する。
「痛っ」
女子が後ろに下がり男子に当たったようだ。
「ごめんね、レイ君」
キャピキャピした声と反対に低く落ち着いた声が響いた。
「大丈夫」
俺は何か違和感を感じた。
鋭い瞳は俺を見ていた。一瞬だったが何か見極めるようなそんな目だった。
◎
(アイツは何者だ…?)今日転校してきたオレンジがかった赤毛の同級生。
ソイツが来てから魔物が学校に全く現れない。
鳴き声もしない、おかし過ぎる。
「ガーベラ」
周りに人がいない事を確認し、小声で呼んだ。眠そうに閉じられた瞳をした僕の使い魔、花の香りがし、いつも通り僕の傍にいる事が分かった。
「周りがうるさい」少年のような中性的な声が響いた。
クルクルとウェーブがかった薄紫色の髪の毛が少しだけ現れる。
「説明しろ」
「魔王がいる、魔王が…呻き声がうるさい」
「呻き声…?」
レイは考える素振りをした。
「レイ君」甘く低い声が響く。
聞き覚えのある声にサッと警戒した。
「君、隣の席だよね?」ニコッと笑い話しかけてきた。
オレンジ色の襟足のある長めの髪、ぱっちりとした大きな瞳で中性的な印象を受けた。
魔王には、まるで見えない…こういう奴ほど強かったりするのか?
それに何で俺に話し掛ける…?
先程、周りに話し掛けるタイミングを計っているクラスメートはたくさんいた。
今は全く人がおらず長く広い廊下に二人きりだ。探るように凜音を見る。
俺の懐疑的な気持ちを知ってか知らずか、もっと接近してくる。
「友達になろう」
甘く優しい声で凜音は言った。
普通、逆じゃないか?
急に接近してきた魔王?に警戒心が強まった。
(二人きりだし出来るか…)
俺は心を読む魔法を使った。
[可愛い]
(は…?)
ポカンとしたレイはバッと後ろを振り返った。その声の先の女子を探す。
先程と変わらず二人きりだった。
「仲良くなりたいなぁ」また凜音の心の声が聞こえた。
間違って何かぶっ飛ばして無いよな…レイが振り向いた時、そう思った。だが音もせず、レイが見ている方向に注目していた人は誰もいなかった。
どうしたんだろう…?
「レイ君こっち向いて」
何かを探している素振りだった。
こっちを向かないので顎を掴もうか迷う。
でもそうしたら嫌われるかもなぁと考え、妥協してレイの肩を軽く叩いた。
ビクッと反応し、レイは警戒した猫のような反応をする。
「どうしたの」柔らかな笑みで警戒心を解くように問かける。
「いや、別に」
目を見開いたまま、素っ気無い言葉が返ってきた。
「別にじゃないでしょ」
レイの顎をガッとつかみ目が合うよう固定する。
「な…に」怯えた表情でレイは震えてる。
凜音はいつもの魔物の様子が思い浮かんだ。
「大丈夫だよ、酷い事はしない。俺の言うこと聞いてくれたらね」
イタズラを考えた子供のようにクシャッと笑った。
レイは凜音の笑顔にビクッと身体を震わせた。
魔法少年凜音 冬 @iuro
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