第5話 お金は大事ですね。

「書類発行料金は500ストーンです。」


「……。また来ます…。」


そう、よくよく考えてみれば僕はお金を持ってきていない。

家を出る際に、リュックと水筒、枕しか持ち出してなかった。これまで、家から出ることがなかったし買いたいものもなかったからお金を持つ機会がなかったのだ。あまりにもお金がない生活が普通すぎて忘れていた。

とりあえず、メドゥーサのお姉さんに話をしに行こう。


「…ということで、書類発行ができません。」


「そ、そうなのですね。では、書類発行代を稼ぐ必要があると…。」


そう言って、何か考えている様だ。


「でしたら、薬草採取をしてはいかがでしょう?横のカウンターで薬草の買取は常時行っております。

依頼に関係なく薬草採取を行うことも可能ですので、そちらで多少のお金を稼ぐことは可能です。しかし、薬草を見つける・摘むの2段がとても難しいですので慣れるまで時間がかかると思いますが頑張ってください。」



ということで、書類のいらない薬草採取でお金を稼ぐことにした。お金といえば、僕は今日泊まることもご飯を食べることもしっかりと考えていなかった。ふむふむ。これも人生経験か。

とにかく、さっきお姉さんに貰った薬草の群生地帯と摘み方の書いたメモを持って薬草摘みに行くことにした。



「えっと、ここはどこだろう。」


自宅を出てからというもの、同じセリフを何度も言っているような気がする。

街を出てからはしばらく、さらに南に向かっていたと思うのだが、いつの間にかグルグルと動いていたから今どこにいるのか分からなくなったようだ。


「まぁ、なるようになるだろう。

魔法で薬草採取も順調に進んでいることだし。」


そう考えて水筒の水を飲んだ。

もう水筒の残りも少ないことから、また水魔法で水筒の中を満たす。

魔法の使いすぎで、そろそろ魔力が僅かになってきたから早く帰りたい。



「エコー魔法、エリアチェック」



エコー魔法は、自分のイメージが効果に大きく影響するので扱いが難しく、この魔法を使える者は多くない。

僕はいつも頭の中に、自分を中心として自分から波状の波が出ているように意識している。探している対象物が見つかれば、波状の意識に強く反応して分かるようにするのだ。このように、魔法はイメージをどのように持つかで個性が現れるので面白いのである。


魔法を使ってみると、自分が今ずいぶんと深い森の中にいることは分かったが、場所まではわからなかった。だが、随分と北側に行けば崖があって、そこに洞窟があるとわかった。つまり、ダンベルの街の方向へ行けば良いということか。

今は夏で明るいが、何でも屋で確認したとき16時だった。

おそらく今は18時くらいだろう。夕日がどんどんと沈んできているから間違いない。

急ごう。

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