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 ドラッグストアにて満面の笑顔(とはいえ前髪で殆ど見えないけれど、口元を見ればわかる)を僕に向け、育毛剤を大事そうに抱えてきた少女がいる。

 何を隠そう、僕の妹だ。


「紗凪、それは育毛剤だ。シャンプーでもコンディショナーでもない。それ以上髪の毛増やしてどうするつもりだ? 羊にでもなるか?」

「これを使って羊になっちゃったとして、それはそれで本望だよ。毎日のんびり出来そうだし」

「なら、その羊の毛は僕が刈ってやるぜ〜」

「兄ィのえっち! じゃ、じゃあどの毛根刺激剤がいいの?」


 毛根は十分元気だよ。刺激もいらん! 何だよその毛根刺激剤って!

 僕は紗凪の手を取り女性用整髪剤コーナーへ誘う。到着すると紗凪の瞳が輝いた、ように見えた。何度も言うけれど、眼は前髪で見えないのだけれど、周囲に煌めくエフェクトがなんとなく表情を想像させてくれる。そんな仕様となっている。


「兄ィ、すごいねドラッグストアって! CMに出てるやつがいっぱいあるよ! はっ! ど、どど、どうしようっ!? こんなところにいるとCMに出ちゃうかも、兄ィ! 逃げないとっ!」

「出るか!」


 世間知らずのレベルが銀河級だなギャラクシー。

 どうやら僕は、妹の育て方を根本的に間違えていたようである。学校の通学か商店街での買い出しでしか家から出ないのは考えようだな。


 こんなんじゃ、二人に笑われてしまうな。


 どうやらお互いに、——紗凪は勿論、僕も、少し社会勉強が必要みたいだ。

 護るだけじゃ、紗凪は、————

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