『宇宙ミニ・コアラ』

やましん(テンパー)

『宇宙ミニ・コアラ』

  『これは、おとぎ話である。』




 ドンブリ環状星雲人がつれてきたペットは、『宇宙ミニ・コアラ』という、地球名がついた。


 その、地球のコアラさんにそっくりだが、ふた回りくらい小さく、じっと見つめる、くりくりの目、あどけない姿、かわいい、仕草や、鳴き声。


 テレビに出たとたんに、大人気になるに違いなかった。


 しかし、地球政府は、すぐに、ドンブリ環状星雲人以外の飼育は禁止し、輸入も認めない措置をとった。


 実のところ、宇宙ミニ・コアラちゃんは、体から猛毒を分泌する。


 人間なら、5秒で即死である。


 ドンブリ環状星雲人にとっては、別に毒ではない。


 さて、で、禁止されると、手を出したがる皆さんがいる。


 悪質な仲介、販売業者さまがいるのだ。


 ただ さすがに、客に、あまり死なれては困るから、細かい取説を用意した。


 つがいにするのは、禁止された。


 さらに、飼育器と、防護服も用意した。


 きちんと着用し、あとしまつを、専用の洗浄機で怠りなく実行していれば、命にさわりはでない。


 雑食性で、大概のものは食べてしまう。


 しかも、実は、人間も大好物だなんて、誰も思わなかったのである。


 某自治政府は、そこに目をつけた。


 政敵の排除に役立つと考えた彼らは、ドンブリ環状星雲人と、秘密協定を結び、宇宙ミニ・コアラちゃんの正しい扱い方を学んだ。


 仕事がすんだら、さっさと回収できるテクも編み出した。


       🐨


 それは、もう、ものすごい繁殖力だった。


 政府職員の、ちょっとした気の緩みが原因だったが、飼育施設から、脱走されてしまったのだ。


 某政府は当初、事実を隠蔽したのである。


        🥩


 気がついたときは、もはや、手遅れだった。


 まわりには、たくさんの、宇宙ミニ・コアラちゃんが、あなたを、食べに来ていたのである。


 地球人は、絶滅の危機に追い込まれたのである。



  🐨🐨🐨🐨🐨🐨🐨🐨🐨🐨🐨🐨🐨



 ドンブリ環状星雲人の司令官が副官に言った。


 『みろ、うまくいったろ。地球人は、わきが甘いから、扱いやすいと思ったんだ。』


 副官が答えた。


 『地球は、いただきですな。』


 『うん。美味しいぞ。10年分はあるかな。』


 彼らは、惑星イーターだった。


 月サイズの宇宙船が、地球を見下ろしていたのである。



      🍽️ 🌎 🍽️

 

 

 

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

『宇宙ミニ・コアラ』 やましん(テンパー) @yamashin-2

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る