総統が死んだ日~Thousand Weeks Reich~
犬飼 拓海
序章 ドイツ第三帝国
Das Dritte Reich
1932年7月、当時のワイマール共和国国会議員選挙において、アドルフ・ヒトラー率いる国家社会主義ドイツ労働者党が約38%の得票率を得て230議席を獲得。ワイマール国会第一党となった。
その半年後、フランツ・フォン・パーペンが首相に任ぜられたパーペン内閣は失脚・退陣し、ヒンデンブルク大統領の承認を得たヒトラーはドイツ国家人民党の協力を取り付け、1933年1月30日にヒトラー内閣を結成し、同日内相であるヴィルヘルム・フリックを通した談話で
(1),国際社会との平和裏の共存
(2),ワイマール憲法の遵守
(3),共産党を弾圧しない
という政策方針を表明した。が、この政策はほどなくして反故にされることとなる。
1933年3月、首相となったヒトラーは国会において全権委任法を可決させ、国家社会主義ドイツ労働者党による事実上の一党独裁制の下、ヒトラー首相が率いる政府に、ヴァイマル憲法に拘束されない無制限の立法権を授権した。
ヒンデンブルク大統領亡き後は『総統』として大統領権限も掌握することとなり、ヒトラーの個人崇拝は国民的なものになって行った。公務員や一般労働者が右手を挙げて「ハイル・ヒトラー」と挨拶することや、公・私文書の末尾に記載することが義務付けられ、民衆が党や体制に対する不満を持つことがあっても、地方・中央の党幹部に批判が向けられ、ヒトラー自身が対象となることはほとんどなかった。
1935年3月16日にはドイツ再軍備宣言を国際社会に対して宣言し、翌年の1936年3月7日にはベルサイユ条約で非武装地帯と設定されていたラインラントに進駐した。
そのころには様々な助成金や公的事業による失業者の雇用のために開始されたアウトバーン、『みんなの車』という意を表す『フォルクスワーゲン』、独自の経済理論でさまざまな好影響をドイツ国内に発生させ、国民の生活水準はみるみる向上していった。
しかし、国民生活の向上とは裏腹にナチ党による生活統制もより一層激しいものとなっていった。
1938年には国防軍の司令官を更迭し、ドイツ人が多く住まうオーストリアを併合。翌1939年にはスロバキアと共同してポーランドに軍事侵攻を開始した。
同年9月3日にイギリス、4日にフランスがドイツに宣戦布告し、第二次世界大戦が勃発した。Ⅱ号戦車やⅢ号戦車により機甲化された師団によりわずか一か月ほどでポーランドを完全に占領し、総督府を設立、ナチズムによるユダヤ人迫害を徹底させた。
1940年4月にはヴェーザー演習作戦によってノルウェー、デンマークに侵攻を開始し、デンマークは保護国になり、ノルウェーにはナチスドイツの傀儡政権が置かれた。
同年5月にはルクセンブルク、オランダ、ベルギーが降伏し、翌6月にはフランスが休戦を申し入れ、北部をドイツが、南部をドイツの影響力が強いヴィシー政権を擁立する。
1941年、第三帝国はユーゴスラビア、ソビエト連邦に侵攻を開始し、同盟国であった日本が真珠湾攻撃を行ったことによりアメリカに宣戦布告したのに際して、アメリカに宣戦布告した。
開戦当初はフランスのソミュア戦車やポーランドの豆戦車には圧倒的な火力装甲を有していたが、KV-1やKV-2、T-34などの重装甲かつ高火力な戦車たちや新たな技術である傾斜装甲をふんだんに取り入れた車両、高貫徹85mm砲を搭載し、ドイツ最強の重戦車である
その後東部戦線もソビエト連邦によって追い戻され、瓦解。その場にあったもので急造兵器を作成し応戦するものの反撃も虚しくソ連の物量に押されゆくばかり。
1945年に入るとドイツ領内への攻撃も勢いを増し、4月16日にソ連軍がベルリンに到達。ベルリンの戦いが勃発した。青年突撃隊などによる必死の抵抗も虚しくソ連軍によるベルリン包囲網完成から5日後の4月30日、前日に結婚したエヴァ・ブラウンとともにヒトラーは自殺した。
彼は後継者に大統領としてカール・デーニッツ海軍元帥、首相に宣伝相のヨーゼフ・ゲッベルスを指名したが、ゲッベルスが地下壕内において自殺し、政府機能が崩壊した。
その後デーニッツのフレンスブルク政府が発足したが、翌日にベルリンがソ連軍に陥落、5月7日に アルフレート・ヨードル大将がランスにおいて連合国への降伏文書に署名し、8日にヴィルヘルム・カイテル元帥がベルリンのカルルスホルストにおいて、降伏文書の批准を行った。
そしてベルリン宣言によりドイツに中央政府が存在しないことが確認され、ドイツ国の歴史に終止符が打たれ、国家社会主義ドイツ労働者党による一党独裁の国家は終焉を迎えた。
では、もしドイツ第三帝国がこのような負け方をせず、戦争に勝利していればどのような世界が広がっていたのだろうか。
これからそのような「IFの世界」を綴っていこう。
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