よく聞くような怖い話
あすらろいど
あのことは今でも鮮明に...
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二人じゃなかった。
一人だった。
さっきまでそこにいたのに。
見えていたのに。
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皆さんにはそんな経験があるだろうか。
小学生の頃、心霊番組や怖い話が苦手だった。というよりも、そういった類のものに触れる機会がなかったために慣れていなかった。中学生になると自分の部屋にテレビがついたこともあって、以前は夏やクリスマスによくやっていた心霊番組を一人で見るようになった。そのおかげでとても慣れたし、面白いと思いながら見ていた。真偽は定かではないが見ていく過程で、心霊写真や心霊映像を見てすぐに霊を見つけられる人は霊感があると聞いた。僕はすぐに見つけられるタイプだったが、霊感なんて微塵もなかった。何も見えないし何も感じなかった。一度でいいから霊を生で見てみたいなんて思った時期もあった。
高校三年の十一月、大学受験とセンター試験の勉強で夜九時頃まで学校で居残りしていた。通っていた高校は夏は暑く冬には雪が積もる田舎にあり、実家からは少し遠く電車通学していたために、夜道を駅まで歩いていた。勉強で疲れた僕は、気分転換にいつも通る街灯のある道ではなく街灯のない小さな道を通っていた。小さな道は中間あたりと突き当りに、大きな道とつながる車一台分ほどの道があった。そこから大きな道の明かりが漏れてきていて、その付近なら人の影を確認することができた。
小さな道の入り口から入り、中間の道にあと二十から三十メートルほどに差し掛かった時、大きな道のほうから小さな男の子とそのおばあさんと思しき女性が歩いて入ってきた。
(男の子がぐずったのかな。おばあさんが散歩に連れ出してあげたのだろう。)
と、僕は思った。暗いながらも前を歩く二人は、ぼんやりとシルエットが見えていた。
(孫思いのいいおばあさんだなぁ)
と思っていたのだが、突き当りについて明るくなったときに気付いた。
目の前を歩いていたはずの二人組が一人になっていた。
男の子がいなくなっていた。
おばあさんは何も気にすることなく、一人で歩いていた。その様子から、男の子がはぐれてしまったとは考えられなかった。僕はひどく混乱した。それまではテレビやネットでしか見たことのない現象だったのに、実際に見てしまった。今見たものは何だったのか。あの男の子はどこに行ってしまったのか。考えても考えても答えは分からなかった。
駅に着いて電車に乗り込み、混乱する気持ちを抑え、実際に見たものを頭の中で整理していた。小さな道沿いに住宅が建ち並んでいたから途中で家に入ったことも考えたが、田舎で車通りも少なく静かな状況でドアの開閉音は一切聞こえなかった。それに夜九時で真っ暗な状況を考えても、男の子が一人で出歩くことも考えられなかった。男の子が実際に出歩く状況を考えても、おばあさんと一緒か保護者が一緒にいる状況しかなかった。実家の最寄り駅まで三十分なのだが、ひどく長く感じた。
家に着き、自分の部屋に荷物を置き風呂に入って寝る準備をする。それがいつもの過ごし方だった。受験もあるので少し勉強してから寝るのだが、さすがに手に着かずその日は寝ることにした。
翌日も学校で授業を受け、夜遅くまで居残りをし、同じ時間に学校を出た。その日は一日中勉強が手に着かなかった。そして小さな道の入り口に着いた。昨日のこともあってこの道を通ることは怖くて絶対できないと感じていたが、なぜか足が小さな道のほうに向いた。何もないことを自分の中で確認したかったのかもしれない。内心とてもビビっていた。この日は、男の子とおばあさんが入ってきた中間あたりまで来ても何もなく、無事に突き当りまで辿り着いた。
(良かった。今日は何もなかった。昨日見たのは勉強で疲れてたから、見間違えたのかもしれない。)
安心した僕はほっと息を吐き、顔を足元に向けた。
「み~つけた」
昨日見た男の子が笑顔で見上げていた。
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