第366話 17章:美女とヴァリアント(18) SIDE スィアチ
SIDE スィアチ
「さっきの少女がそんなに大事か?」
「あんたがナンバカズか」
オレは押し入ってきた人間の質問を無視し、問いかけた。
「そうだ」
やはりか。
これほど強い人間が二人もいてたまるかよ。
見たところ、一緒に来た女の方も大概っぽいが。
「そういうお前がスィアチだな」
「へえ……覚えてくれてたとは光栄だね。人間ってのは忘れやすいからな」
ナンバカズは一瞬顔をしかめたが、すぐに真顔に戻った。
挑発も効果無しか。
見た目通りの若さとは思わない方がよさそうだなこりゃ。
「世間じゃもうオレのことなんて忘れ始めてるからなあ。悲しいぜ。ブギーマンのもとになった事件なんてなかったみたいじゃねえか」
「なぜあんな事件を起こした。ヴァリアント狩りが活発になるとは思わなかったのか」
「関係ないね」
喰うためだけに生きてる連中がどうなろうと知ったことじゃない。
オレもこうして狙われることになるが、寂しさを抱えて生きていくくらいなら、命を狙われた方がマシだ。
「そうか……やはりお前は危険だ」
ナンバカズが魔力を高め始めた。
おいおい……ハンパねえな……。
「まあそういきり立つなって。どうだ、オレを逃がしてくれたら、さっきの少女を返してやる。どうだ?」
「直接人質をとるよりは悪くない手だな」
「だろ? あんたを目の前にして、人間にナイフをつきつけたところで、気付けばオレの首が飛んでそうだしな」
それを避ける方法はあるが、奥の手は隠しておくにかぎる。
「残念だが、お前が逃げるなら、オレがあの少女を殺す」
「は?」
なにを言ってんだこの人間は。
「カズ……それじゃあどっちが悪役かわかんないよ」
女にもつっこまれてるだろ。
だが、今のセリフは聞き捨てならない。
「おい女。オレは悪役をやってるつもりなんかねえぞ。オレがお前らから見て悪役だと言うなら、豚から見ればお前ら人間は全員悪役だ」
「それもそうね。なら、私達が生き残るため、あなたには死んでもらうわ」
女の方もキマっちまってんなあ。
オレが言うのもなんだが、もう少しまともな人生を歩んだほうがいいぞ。
「無駄話はなしだ。お前が死ぬか、少女が死ぬかだ」
ナンバカズが黒刃の剣をどこからともなく取り出し、こちらへ一歩つめてきた。
オレは思わず一歩下がってしまう。
とんでもねえプレッシャーを放ちやがる。
魔王か何かかよコイツ。
ヒミコ様はナンバカズを重要視しすぎだとちょっとバカにしてたが、こりゃあ警戒もする。
まともな人間が、ヴァリアントを逃がさないために少女を殺すなんてことを本気でするとは思えないが、こいつならやりかねない。
そう思わせる凄みがあるぜ。
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