第355話 17章:美女とヴァリアント(7)

 床に積もったホコリを荒らした足跡は二人分。最後にここを使ってかなりたっている。

 やはりまたハズレだ。


「なんだぁおめえ? オレ様を俊足のレツオと知って話しかけてんのかああん?」


 ヴァリアントのうち、赤髪の方が先に話しかけてきた。


「オレ様を俊足のゴウタと知って話しかけてるああん?」


 そんな赤髪の様子を見て、青髪が続く。

 青髪の方は最後までセリフをちゃんと言えておらず、ちょっとバカっぽい。


「二人とも同じ二つ名なのか」

「文句あんのかああん?」

「文句ああん?」


 二人分のセリフを待つのがたるいんだが。


「普通は別々のをつけるよな」

「まじかああん?」

「まじあん?」


 オレの好きなエロゲーの略称みたいに言うんじゃない。


「ゴウタ、お前変えろ」

「やだよ兄ちゃん。兄ちゃんみたいにかっこいいの考えられないもん」


 兄弟なのかこの二人。

 ヴァリアントのもとがそうなのか、依代となった人間がそうなのかはわからないが。

 顔は似てるといえば似てるが、ヤンキーの区別なんてつかないしな。


「コンビ名をつけたらどうだ?」


 オレの提案に二人ははっとして目を見開いた。

 二人はそのまま硬直することしばし。


「「あんた天才だなああん?」」


 アゴをしゃくらせつつハモってきた。

 喜んでんのかねこれは。


「早喰兄弟、レツアンドゴウ!」

「はや……ええと……ゴウ!」


 赤髪に続き、青髪も名乗りを上げた。

 青髪はほとんど自分の名前しか言えてないけど。


「俊足はどこに行ったんだよ」

「早いことに変わりはないぜああん?」


 そう言い切られると、そんな気に……なったりはしないが、そもそもどうでもいい。


「オレはラッシュ49郎世代なんだよ」

「なんだそれああん?」

「ああん?」


 くっ……名作なのに。

 音声入力かと思うくらい、プチ四駆が自在にジャンプしたりするのは、あとから考えるとよくわからんけど。


「ところであんたらはなんでここにいるんだ?」

「ああん?」

「ああん?」


 二人の頭に『?』が浮かんでいる。

 おいおい……。

 鳥頭すぎんか。


「ヒミコか?」


 オレが助け舟を出すと、ふたりははっとした表情でコクコク頷いた。


「お前ヒミコ様の知り合いかああん?」

「ヒミコ様ああん?」

「その様子だと、スィアチを探しに来たってとこか」

「お前、エスパーかああん?」

「なあレツオ、エスパーってなんだ?」

「後で教えてやるから黙ってろ。バカがバレる」

「もうバレバレだと思うが」

「「ああん!?」」


 これでヒミコもスィアチを探していることがわかった。

 部下をここに差し向けて、探しているポーズをしている可能性も思い浮かぶが、それをする意味はないだろう。



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