第337話 16章:ヴァリアント・ザ・オリジネーション(21)
――カルロがなんで!?
疑問に思うよりも先に体が動いていた。
オレは黒刃の剣を取り出し、カルロの首を狙った。
しかし、必殺だったはずの一撃は、空を切った。
既にそこに首がなかったからだ。
[神……よ……]
数メートル先に転がったカルロの頭部は、にやりと笑い、そのまま息絶えた。
一方、胸に大きな穴を空けたシスティーナは、手に真っ赤な剣を持ち、立ち上がった。
先程は水に血を混ぜていたのだが、今回は血だけで作った剣だ。
胸から溢れた血で作ったのだろう。
そして、胸から溢れたはずの血はすでにピタリと止まっている。
「また……私の心臓が……なくなっちゃった……。あの時と一緒……。あぁ……カルロ……」
半空洞になった胸を見たシスティーナの目から光が消えていく。
だが、誰も駆寄ろうとはしない。
なんだこの魔力……っ!
『核』から溢れる魔力が、血液を通じてシスティーナの全身へと無尽蔵に送られる。
『核』そのものが持つ魔力量などとうに超えている。
もしこれだけの魔力が爆発すれば、この国どころか、ローマごとふっとびかねないほどだ。
司教達はシスティーナを狙っていた共鳴術を解除し、オレの結界を囲うように、さらに結界を展開し始めた。
術式の様子からして、この礼拝堂に彼らがそろって初めて発動できるものだろう。
展開途中でもその強固さが十分伝わってくる。
この準備の良さ……最初から全て計画されていたことかよ。
オレ達を閉じ込めるつもりなのかもしれないが、ある意味都合がいい。
『信じがたいことだが、記憶が戻ったのか。いや、核の影響を考えれは……』
スピーカーから、ぶつぶつと独り言が聞こえてくる。
「まさかお前ら、システィーナの記憶をいじったのか!」
先程の共鳴術を使えば可能かもしれない。
もっとも、都合の良い改ざんなどできるはずはなく、まとめて記憶はぶっとんだはずだ。
一部の記憶が戻ったのは、記憶を消した時と同じ術を使った影響だろう。
『核に適性を持つ希有な体質でありながら、神の意志を拒んだのだ。当然の報いだよ』
「人の記憶をいじるなんて……ヴァリアントとやってることは同じじゃねえか!」
記憶の改ざんはオレでも躊躇することだ。
それも、こんな乱暴なやり方は、人一人を殺すに等しい……いや、それ以上の所行だ。
『神について語って聞かせてやりたいところだが、それどころではないようだぞ』
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