第335話 16章:ヴァリアント・ザ・オリジネーション(19)
「気付いてしまったね」
平坦な声でそう言ったカルロの顔から、表情が消えた。
その直後、礼拝堂に白い法衣の老人達が現れた。
その数10人。
彼らは礼拝堂の壁沿いに等間隔に並び、手に持つロザリオに魔力を集中していく。
あのロザリオ、神器か!
魔力の波動から察するに、効果は結界系だ。
システィーナの件で、ここがまともな組織でないことは十分にわかった。
彼らがどうするつもりなのかだが……。
「司教様! おやめください!」
カルロが叫ぶ。
司教といえば、トップクラスのお偉いさんだ。
それが10人も揃うとは、かなりの戦力投入である。
位が高ければ強いとは限らないのだろうが、少なくともここにいる連中は、なかなかの魔力だ。
「う……く……」
「システィーナ!」
苦しみ出したシスティーナにカルロが駆け寄る。
オレもそれに続く。
「何をされている!?」
「司教様達の神器は、特定の魔力に波長を合わせ、共鳴を起こせるんだ。本来は集会で参加者の意識を統一させたり、強い共鳴を起こしてヴァリアントにダメージを与えるのに使うんだ」
「今は?」
『核』の反応を見れば、おおよその想像はつく。
「システィーナの『核』と共鳴させて、自壊を促してる」
「くっ……」
やはりそうか。
オレは司教達からシスティーナ達を護るように結界を展開した。
司教達の攻撃が由依、美海、カルロにさほど効果があるとは思えないが念の為だ。
システィーナは!?
「くっ……うっ……」
少し落ち着いたが、まだ苦しんでいる。
『核』に共鳴の効果が残っているのか。
オレはシスティーナの胸に手を起き、『核』を落ち着かせようとする。
やりすぎると心臓としての機能まで止めてしまう。
ゆっくりだ……だが、可能な限り急ぐ。
いずれにせよ、このままではシスティーナの体が保たない。
結界が軋む。
急造ではあるが、ダークヴァルキリーやヴァリアント程度では、千体かかってきてもびくともしない強度がある。
力で押されているわけではない。
ロザリオの神器を、オレの結界に向けているのだ。
『この10人で破壊できない結界とは、噂以上だね』
礼拝堂内にあるスピーカーから響いたのは、懺悔室で聞いた声だ。
姿はおろか、気配もない。
放送設備を使っているのだろう。
システィーナを殺せと言った声である。
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