第192話 11章:水の星へ覚悟を込めて(4)
芋洗いとまでは言わないが、海の中もそれなりに込んでいる。
今はビーチボールで遊んでいるが、うっかりすると他人と衝突しそうになる。
オレや由依はそんなヘマをしないが、他のメンバーはたまに背中どうしでぶつかって、謝ったりもしている。
幸い、お互い様ということでトラブルにはなっていないが。
それにしてもこのビーチボールという遊び。
腰まで海につかって、ボールをトスしあうだけという、高校生にもなってやる遊びとは思えない。
特にルールがあるわけでもなく、競い合う要素もない。
ゲーマー的にはイマイチである。
ではあるのだが……。
女子がトスをするたびに、その豊かな胸が揺れまくる。
ぽよんぽよん。
ぽよよんぽよよん。
天国かな?
つい無意味に「ダダーン!」と叫びたくなる。
海って最高だ。
みんなが行きたくなる理由を初めて体験しているぞ。
「カズ……幼なじみとして、考えてることはだいたいわかるわけなんだけど?」
そんなオレに、由依があきれた顔を向けてきた。
「な、なんのことかな?」
日常モードで気が緩んでいるせいか、どうしても視線は由依の胸に行ってしまう。
「全く興味をもたれないよりずっといいんだけどね?」
由依は複雑な顔でその大きな胸をぎゅっと抱いた。
「ひゅー、レベルたっけえなあ」「キミたち、オレらとも遊ばない?」
みんなで海を楽しんでいると、そこにいかにもナンパなサーファーといった2人の男達が現れた。
身長180センチを超える、がっしりした体格の持ち主だ。
このあたりがすいていたのは、彼らがいたせいか。
どうやら飲み物を買いに行っていたらしい。
ついでに女あさりもしていたのだろうが。
「いいだろ? オレらが色々おしえてやっからよ」
金髪の男が由依の腕をとろうとするが、由依は触れることすらさせず、その手を避けた。
「おお? 逃げるなって」
なおも男は由依を追う。
「やめてくれますか? 痛い目みますよ?」
「気が強い女は好きだぜ」
今の由依なら、神器なしでもこの程度の男を倒すのは造作もないだろう。
だが、由依にこんな汚い男どもを蹴らせるわけにもいかない。
「ちょっとお兄さん、そいつはオレの連れなんだが?」
オレは由依と男の間に入る。
「はあ? お前みたいなひょろ……くはねえな。いい体してるじゃねえか。顔に似合わず」
一言余計なんだよ。
他の客の目があるから大立ち回りは避けたいところだ。
オレは普通の人間には見えない速度で男のみぞおちを突いた。
使ったのは小指一本だが、穴をあけないよう手加減するのは思ったより難しい作業だ。
「ふぐっ!?」
男は苦しむ間もなく、その場に気絶した。
「ちょっとやめてよ! イヤだってば!」
渡辺は別の男に手首を掴まれている。
なお、美海と鬼まつりは、海の家へと買い出しに行っている。
残りの陽キャカップルの二人はというと……危機を察していつのまにか離れた場所にいる。
あいつら……クラスメイトを見捨てるんじゃねえよ……。
「や、やめろよ!」
「ああん?」
完全にへっぴりごしだが、立ち向かう気のある来栖の方がよっぽど立派である。
ひとまずつかまっちまった渡辺をなんとかしてやるか。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます