第161話 9章:ラブレターフロムギリシャ(18)
「なんの騒ぎだ!? ――んなっ!?」
建屋から出てきた鉄岩が、空を見て口をぱっくり開けた。
こちらに向かってくる超音速旅客機から、黒いモヤが溢れているのだ。
オレの視力なら、そのモヤは旅客機から湧き出すヴァリアントの大群だとわかる。
ギガースだ。
総数は300といったところか。
あの超音速旅客機、乗員数は130人弱だったはず。
人間形態に戻したヴァリアントを無理矢理つめこんできたのか?
それにしても定員オーバーなはずだが。
「ベルトルド! なんだあれは!? 敵の規模は!?」
兵士から双眼鏡をひったくった鉄岩がそれを見ると、教官へと詰め寄った。
慌てふためく鉄岩を冷めた目で見た教官は、探知能力の高い兵士の報告を彼に伝えた。
「さ、300体!? そんな大群がなぜこんな孤島を襲う!?」
鉄岩が驚くのも無理はない。
都市部にでも出現させた方が効果的だ。
そんなことをすれば、大騒ぎではすまないだろうが。
「オレのせいですね」
「キミの……?」
「ここに来た日の夜からずっと、大量の魔力放出を毎日やってましたから。まずはここを潰そうと考えたんでしょうね。街で大量発生されるよりいいでしょう?」
もちろん、わざとやったことだ。
「くっ……だが、倒せるんだろうな?」
鉄岩はオレではなく教官を見て言った。
「全力は尽くしますよ」
「確実に勝て! いや、無理なら時間を稼げ! まったく、なぜ私が視察に来た時に限って……」
人間、追い詰められると本性が出るものだな。
「お取り込み中のところ悪いのですが、約束の『条件』を教えてもらえますか?」
オレの言った『条件』とはもちろん、由依を自由にするためのものだ。
「それどころではないだろう! あの数を見たか! ヴァリアントと一対一で勝てれば精鋭の中でもトップクラスだというのは聞いているだろう!? こちらの数が足りんのだ!」
「ここの連中はもう少しできるようになっていますよ」
「ほ、ほう……?」
鉄岩の目に浮かんだのは、保身から来る安堵か。
「オレが9割倒せば残り30。兵士20人と由依ならなんとかなると思いますよ」
「この状況でよくもそんなふざけたことを、なら約束の条件はあのヴァリアント達の9割をキミが倒すことだ」
「よし! 聞いたなみんな!」
「「「イエス! ボス」」」
「な、なんだ……?」
オレに向かって敬礼する兵士達を見た鉄岩は、おどろきとまどっている。
「見ていてお父様。私が並び立ちたいと思う人は、とても凄いのよ」
情けない姿を見せる父をひややかな目で見ていた由依が、得意げにそう言った。
ご期待には応えますよ。
さて、まずはあの旅客機をなんとかしないとな。
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