第158話 9章:ラブレターフロムギリシャ(15)
顔合わせから一夜あけ、今日から本格的に訓練が始まる。
今日は教官による戦略訓練はなく、オレによる戦術指導のみだった。
午前中は基礎の鍛え直しと、午後からは模擬戦。
模擬戦ではチームを3つに分けてのバトルロイヤルだ。
十人ずつの北欧兵士チームと、オレと由依は2人で1チームにした。
オレは全力で手加減をしつつ、ほどほどに由依のサポートだ。
由依にはこれを機会に、対多人数戦の訓練をしてもらおう。
結果はもちろん、オレと由依の圧勝だった。
そんなこんなで訓練初日の夜。
「なんだこの訓練……」「いつもの百倍きついぞ」「あのお嬢ちゃん、あの訓練についてくるなんてナニモンだよ」
兵達は全員ぶっ倒れ、死屍累々となっていた。
「さて由依、じゃあオレ達は訓練を始めるか」
「うん。準備運動は終わりだね」
「「「は?」」」
連れだってその場を離れるオレと由依を見た兵士達は、そろって声を上げたのだった。
「カズと二人で特訓するの久しぶりだね」
「言われてみればそうだな」
双葉が合流してからは、三人での特訓ばかりだったからな。
「えへへ、今日は何するの?」
それなりに疲れているはずなのに、由依は嬉しそうに笑った。
「夜の水中戦の訓練をする。水中戦はかなり勝手が違うからな。なれておいた方がいい」
「それで水着なのね」
今の由依は競泳水着を身につけている。
競泳水着に黒タイツというマニアックの極みのような格好だ。
「慣れてきたら普段着でもやるが、初日は動きやすさ重視でな」
「ビキニじゃないとちょっと苦しいかも……」
由依の大きな胸が、水着の下から強烈に主張している。
ビキニも見てみたいが、激しく動くと脱げちゃうかもしれないからな。
そういうオレはハーフパンツにTシャツである。
体表面に薄い防護膜を自分で張れるので問題ない。
「水中での呼吸は?」
「できないよ」
だよな。
オレは由依に水中呼吸の魔法をかけた。
本来は自分でかけられない魔法をかけてやるのは、緊急時に対応できないのでさけたいが、今回は呼吸のみアリでいく。
さらにオレは魔力の糸を由依に伸ばし、思考で会話できるようにした。
宇宙空間でも使っていた方法である。
オレと由依は海に潜る。
月明かりがわずかに届くかどうかの海の底。
陸よりも深い夜が広がっている。
「由依は水中で使える技を持ってるか?」
「専用のはないけど、グングニルは発動できるよ」
水中では由依が得意とする脚を使ってのスピードが活かせない。
そういった状況でも、自分の身くらいは守れるようにするのが、この訓練の目的だ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます