第152話 9章:ラブレターフロムギリシャ(9)
「ヘイボーイ、戦績はどんなもんだ? オレはさっき言ったとおり10体だ。ボーイは3体か? 5体か? まさかマグレで1体だけ、なんてことはないよな?」
アクセルが軍服を脱ぎながら、ニヤリと笑った。
なぜ下まで脱ぐ……。
「いちいち覚えちゃいないな。少なくとも10体は余裕で超えてるが」
記憶定着の魔法を常時使っているおかげで、実は覚えているのだが、言ってもどうせ信じてもらえやしないだろう。
「ふんっ、その強がり、オレの神器を見ても言えるかな!」
ブーメランパンツ一丁になったアクセルは、そのパンツのゴムを引っ張り、パチンとと鳴らした。
「いくぜ! レーヴァティン!」
そう叫んだアクセルの履くブーメランパンツが輝くと、体がどんどん巨大化しながら、肌が岩のように硬質化していく。
巨大化後の身長は約4メートル。ギガースよりも1メートルほど大きい。
その大きな岩の拳から繰り出される攻撃の威力は推して知るべしだろう。
それにしても、『炎の剣』に『レーヴァティン』か。
「たしか北欧神話では、レーヴァティンを保管しているのは、巨人スルトの妻だったよな。そして、『炎の剣』の持ち主はスルトだ。あんたらデキてんのか?」
「ち、違うぞ!? そんなんじゃないぞ!?」
おおっ? イケメンのクセに随分純情な反応だ。
「はぁ? アタイは女たらしはゴメンだね」
一方、気がついたアマンダは、吐き捨てるように言った。
こりゃあ、今の時点では脈なさそうだ。
他の兵士達は、「またはじまったぜ」と苦笑いをしている。
「ぐぐぐ……やろう! ぶっ殺してやる!」
アクセルはその巨大な拳をオレの頭上から振り下ろしてきた。
おいおい、あんなもんを普通の人間が喰らったら死ぬぞ。
アマンダもそうだが、『手加減』の意味を知ってるのか?
それとも、普段からこれくらいの訓練をしているのだろうか。
ともかく、オレはアクセルの一撃を下がって避けた。
「おいおい、お嬢ちゃんより速いぞ」「それより、あの速度で動いて砂が全く舞ってない」「ボーイの方もけっこうやるんじゃないか?」「神器を使わずに出せるスピードじゃないが、使った瞬間がわからなかったぞ」
兵士達が驚きの声を上げた。
そこそこ見る目はあるみたいだな。
神器なんてものは使ってないが。
「くそっ! 当たりさえすれば! 日本人はスピードタイプが多いのかよ!」
アクセルは、下がるオレを追いながら、次々に拳を振り下ろしてくる。
砂が、水が、大量に舞い上がっていく。
たしかにすごいパワーだ。
ギガース相手でも正面から殴り合えるだけのパワーはあるだろう。
だが逆に言うと、その程度ということだ。
オレは振り下ろされたアクセルの拳を片手で受け止めた。
「「「なっ!?」」」
由依以外の全員が驚愕の声を上げる。
「速度だけじゃなく、パワーもオレより高いだと!? そんなこと、あるはずがねえ! なっ!? なんだ!? 動かない!?」
受け止められた拳を引こうとするアクセルだが、自分の拳が動かないことにうろたえている。
人の顔の三倍はあるその大きなその拳は、オレの手にがっしりと掴まれているからだ。
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