第65話 5章:ドラッグ オン ヴァリアント(22) SIDE 由依

 SIDE 由依



『ナニカアルナライエヨ』、


 カズからのメール。

 カナ文字だけの簡素なやりとりだけど、その一行だけで胸が高鳴る。


 彼は私のことをとても大切に想ってくれている。

 でもそれが、恋愛的な意味なのかはわからない。

 時折みせる恋愛の苦手な男子っぽい表情と、子供を見守る大人のような視線が混ざり合い、私をどう想っているのかわからなくさせている。

 それが魅力的でもあるのだけど。


 考えてみれば、恋愛的な意味での好きなんて、私もよくわかっていない。

 でもきっとこれが恋だと想う。

 違うと言われるのなら愛だろう。



 男の子って、もっと大胆な方が好きなのかな?

 年頃の男子はみんなエッチだと聞くし。


 でも、顔を近づけるだけで、私もドキドキしてしまう。

 彼の体に触れてしまうだけで、頭が爆発しそうになって、なにをしたのか半分も覚えていられない。


 こうして彼のことを思い出すだけで、胸と顔がかっと熱くなる。


 この家にいる間に、唯一幸せを感じられる瞬間だ。



 『ダイジョウブ アリガトネ』と返信する。

 本当はもっとたくさん送りたいけれど、20文字以内のメールを何通も送るのは、最近ドラマで流行ったストーカーみたいに思われるかもしれない。

 ここは我慢だ。


 彼からのメールを何度も見返しては、PHSを胸に抱き、ベッドをごろごろするのを繰り返している。

 そうしていると、電話が鳴った。


 独自にクスリの出所を調査させているが、その結果が出るにはまだ早いし。

 カズからだったら良いなと思いつつも、PHSの液晶パネルを見る。


 そこに表示されたのは、残念ながら彼の名前ではなかった。

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