異世界帰りのアラフォーリーマン、17歳の頃に戻って無双する
遊野 優矢
第1話 プロローグ
■ プロローグ ■
「魔王、そして魔神達の討伐、ご苦労様でした」
見渡す限りどこまでも続く真っ白な空間。
そこに佇むオレの耳に、透き通った女性の声が響く。
残業代の出ない、会社に連泊オーケーなアラフォーブラックリーマンが、剣と魔法の世界にオギャアと転生して17年。
オレは救世主として、人間に害をなす数々の魔物や神を屠ってきた。
そして死んだ。
女神と名乗る声は続ける。
「これまで幾人もの異世界人を転生させてきましたが、魔界の王だけでなく、神まで倒したのはあなたが初めてです。これでこの世界は、五千年は平和になるでしょう」
そりゃ良かった。魔神と刺し違えた意味もあるってもんだ。
「本来ならばこのまま魂を天界に連れていくところですが、その功績を讃え、選ばせてあげましょう。天界に行くか、このまま生き返るか、もといた世界に戻るかを」
天界に行くというのは、オレが転生した先では伝説級に名誉なことで、一生……というのもおかしいが、永遠に幸福を感じ続ける存在になれるらしい。……なんだか危ない響きである。
このまま生き返れば、どんな地位も名誉も金も女も思うがままだろう。妬まれて暗殺されるかもしれないが、オレは既に人間にどうこうできるような存在ではなくなっている。だが生き返ったところで、オレが一番会いたい女はもういない。ならば、いくら平和と言っても、こんなに文明の遅れた……何より、辛い思い出の多い場所にいる意味はない。
「もとの世界に戻してくれ」
「本当に良いのですね?」
もとの世界に戻ったらまず、退職願をクソ上司のハゲ頭に叩きつけてやろう。
転生前は六月中旬だったからな。気になっていたアニメの最終回が楽しみだ。
そうそう、ちょうど推しのVtuberの3Dお披露目前日だったはずだ。スパチャしなきゃな。
「やってくれ」
「わかりました。それでは良き人生を」
ろくな人生になる気はしないが、せっかく女神が祝福してくれているのだから、ありがたく受け取っておこう。
どうせなら、こちらの世界で身に付けた能力の1%でも持って帰れないだろうか。いや、使い道なんてないな。そんなことになれば、超人もいいとこだ。スーパーヒーローになるような趣味はない。
そういうのはもうお腹いっぱいだ。
そんなことをぼんやり考えているうち、オレの意識は徐々に遠ざかっていった。
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