ロック城
エリー.ファー
ロック城
殺せ。
ここで奴隷になるくらいなら死んでやる。
魂が汚れるくらいなら、王のためにこの命を捧げてやる。
いや、ここで自爆をしてやる。お前らは知らないだろうが、私は自爆魔法を憶えている。それを使えば、こんな城など木っ端みじんだ。ゴブリンたちも、魔王もすべて消し去ってやる。
人間たちの世界と魔物たちの世界は、しっかりと共存してきたはずだ。それなのに、その暗黙の了解を破って侵攻してきたのはお前ら魔物たちだ。人間たちは、魔物と仲良くできるかもしれないと、道を探っていたのに、魔法で村を焼き払い、女子供を惨殺。およそ、まともな考えとは思えない。
分かるか、お前ら魔物が人間の心に闇を植え付けたのだ。
その闇は増幅し、今や人間側は魔物たちを倒すだけではなく、同じ人間同士で殺しあっている。欲があふれ出てきたのだ。この混乱に乗じて、多くの国が隣国を攻めたり、天下統一を目指そうと動き始めてしまった。
これがすべてなのだ。
魔物と人間の争いとして始まったもののはずが、蓋を開けてみれば命を持つ者たちは、お互いを憎しみあって殺しあうことが癖になってしまった。魂に刻まれてしまったんだよ。逃げられなくなってしまったんだ。
争いから遠ざかることはできても、自分から遠ざかることはできない。
たとえ、その先に死が待っていたとしても。
止まれないのだ。
禁止魔法を知っているか。
スティングレイズ。
これは、ある特定の種族を、この星から消し去るという魔法だ。
二千年前の戦争で使われたことで、この星を支配していたとある種族が滅んだことで平和が訪れた。しかし、あまりにも強大なその力は、封印するべきとの結論がでた。これは、人間と魔物の間でも取り交わされた契約だ。さすがに知っているだろう。
原理は簡単だ。まず、左曲がりの林檎というレアアイテムを使用するのと同時にファイアを放つのだ。左曲がりの林檎は、本来、魔法を使用するために必要となる魔力を消費させないようにする効果があるが、魔法を使用するのと同時に行うとごく稀に魔力がすべて消費された状態となる。こうして、術者は基礎的な魔法論理から逸脱した存在になり、今後魔法を使うことのできない体でありながら魔力が全くなくとも生きていける体を手に入れられる。この術者を生贄にして闇魔法を使用するのがスティングレイズだ。
つまり、バグ技だ。間違っても、正式な技とは言えない。
特定の種族を滅亡させることができるが、それだけでこの魔法の効果が終了するかは分からない。他の種族を滅亡させるかもしれないし、もしくは絶滅した種族や魔物を復活させてしまうかもしれない。
分からないことばかりだ。
だが、人間側の魔法使いたちは。
スティングレイズを使用する予定だ。
いいか。
魔物は必ずこの世から消えてなくなる。
もう、これは決定事項だ。
お前らが私をどれだけ拷問したとして、もう何も変わらない。
この争いは最初から、スティングレイズによって終わることが宿命づけられていたと言ってもいい。お前ら魔物は人間を怒らせたんだ。
神の逆鱗に触れたのだ。
この際だ。人間も巻き込まれて消えてなくなってしまえばいい。他の種族もすべて、巻き添えを食えばいい。
死ねっ、死ねっ。死ねえええぇっ。
みんなっ、死ねええええええええええっ。
ロック城 エリー.ファー @eri-far-
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