WOOOOOOOO7

エリー.ファー

WOOOOOOOO7

 死にそうになる時がある。

 それは、いつだって、何かに立ち向かっている時だ。

 人間は成長をしたくてたまらない。むしろ、成長しないことの方が難しい。美しく奏でられる自分の生き方に、喜びを憶え、そこから外れた時に絶望を感じる。

 大人として生き方、人間としての生き方、年齢に見合った生き方、そこから始まるはずだった自分の中に生まれた、誰ともあわせることのできない生き方。

 哀れだと思われても構わない。

 そんなことを思う。

 宇宙のど真ん中で。

 地球など遠くにみることもできないほどの、暗闇の中で。

 宇宙船の事故だった。

 一瞬だった。

 記憶などない。

 そのままこの暗闇の中にいる自分に気付いた。

 自分が何者なのか、自分がどのような目的でこの宇宙にやってきたかは憶えている。事故の詳細は分からない。

 けれど、それだけで十分なのだ。

 何故なら、死ぬことが確定しているから。

 私がどこにいて、どのような状況なのかは、きっと誰にも分からない。というのは、腕にある救難信号を出すための機器が故障しているのが分かったのだ。おそらく、死体になっても誰にも気づかれないだろう。救難信号を出さなければ、どこにいるかが誰にも伝わらないというように、改造してしまった自分が一番悪いのだが、こればかりはしょうがない。

 宇宙にいても、個人情報は守りたかったのだ。 

 なんというか、地球にいても、宇宙にいても、誰かに見られているのではないかという思いは、非常に窮屈なのだ。脳が締め付けられるというか、恥ずかしいことをしているという認識がどこかで発生していて、それを思い出すとリンクしてしまうのである。なんというか、とにかく、誰かに理解されるのが怖いのだ。誰かが私に興味を持っていることが怖い。私について何かしらを知っているということが怖いのだ。

 ほとほと、愛想が尽きた。

 こういう性格に、である。

 でも、もういいのだ。

 私は死ぬのだから。

 私はもう、自分の思考の中に取り残されるだけで十分なのである。

 例えば、地球は平和になるのか。

 いや、無理だろう。

 難しいのは間違いない。

 多くの人の主義主張があり、そこにはその数だけの正義がある。残念なことに、善と悪というような、分かりやすい構図などは存在していないのである。そこに、右か左か、黒か白か、空か地面かくらいの違いしかない。あるというだけなのだ。対極に位置しているという事実が争いを生んでしまっているのであって、それ以上のものがそこにあるわけではない。

 つまり。

 人はどうしても、意味を付けたしたいのだ。

 勝負というものがただ行われているとは思いたくない。

 どこか、リスペクトが感じられるものであってほしいと願っているのだ。

 私には分からない。

 戦争をコーディネートする側でしかなく、それによってどれだけの兵器が売れたか、どのような兵器がトレンドであるかということくらいしか、私の知りたいことはないのである。

 自分を戦争に売り渡した結果が、このような人生を作り出していると思うと、吐き気がするが、これも復讐と言えるのかもしれない。

 妻も、娘も、息子も、父も、母も、戦争で亡くしたのだ。

 復讐ではないか。

 違うか。そうか。

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