第45話 風変わりな武器でも、お手の物です。
短めの青髪ショート、ところどころ跳ねた髪をしていた。
にっと笑った顔は垢抜けていて、とてもフランクな印象を受ける。
ミリリともまた違った風に、溌剌としていた。
ショートパンツをバッチリ着こなしている。
どちらかといえば、格好いい女性だ。
「依頼したモニカだよ。よろしく〜」
自己紹介とともに、俺たち一人一人に握手を求める。
そののちに、より具体的な話をしてくれた。
「私、光魔法使いなんだー。戦える系の、ね。珍しいっしょ?」
得意なのは、技の反射魔法や、ヒール魔法など、補助魔法らしいが、彼女自身もそれなりに戦えるらしい。
さすがはAランクに臨まんとする冒険者だ。
「でもねぇ、そっちも実は不安でさー。最近、一人でばっかり動いてるから、自分の力がわからないんだよねぇ正直」
追加で頼んだ、紅茶をすすって、モニカさんは足を組み替える。
品定めするように三人を見たかと思えば、俺の顔の前、ぱちんと手を合わせる。
「お手合わせ、お願いしてもいいかな? ヨシュアさん」
「えっ、俺ですか……?」
Aランクはミリリだけだ。
Cランクの俺に話が回ってくるとは、思わなかった。
「あなた、かなり強いでしょ。それぐらいは分かるよぉ」
一応、魔力を抑えるネックレスはつけていた。
そのうえで言うのだから、それなりの実力は保証されているらしい。
こうなったら、断りようがなかった。
♢
モニカさんの武器は、かなり珍しいものだった。
「私、腰に色々提げてるの苦手でさぁ」
煌々とした光を帯びた、鞭。
それを空中でくるくる回し、腕を振り、俺の方へと伸ばす。
「楽しみだなぁ。久々に人とやるからさー、興奮してきたかも♡」
……言い方はともかくとして。
あまり相手取ったことのない武器であった。俺自身もほとんど使ったことがない。
細かい操作が求められそうなのは一目瞭然だ。だからこそ、
「で、あなたの武器は?」
「あぁ、俺も同じですよ。鞭でいかせてもらいます」
同じものを使わせてもらうことにした。
_____________
冒険者 ヨシュア・エンリケ
レベル 390
使用可能魔法属性
火、水、風、土、雷、光
特殊スキル
俊敏(高)、持久(高)、打撃(高)、魔力保有(大)、広範探知(高)、目利き(高)、隠密(中)、治癒・解毒(高)
ギフト
【無限変化】
あらゆる武器や魔法への適性を有する。
一定以上の条件が揃うと、スキルを習得可能。
武器別習熟度
短剣 SS
長剣 A
大剣 B
弓 B
ランス C
魔法杖 B
【New!】鞭 C
……etc
_____________
レベルが順調に上がっていたり、剣の習熟度アップも嬉しいが、今気にするべきはそこじゃない。
ステータスを確認したところ、鞭の習熟度はCだった。
普通、使ったことのない武器は習熟度Fスタートなのだが、そこはギフト【無限変化】のおかげであろう。
「私以外で使ってる人、初めて見たよ。ますます興奮してきたかもっ」
場所は、ギルドに隣接された練習場に移していた。
審判が立つ台の上、ミリリが勢いよく手を挙げる。
笛が吹かれたら、開始の合図だ。
ひとまず、俺は後ろへと下がり、相手の出方を見ることとする。
「光よ、縦横無尽に駆け回れ。光鞭の乱!」
鞭は、その身をくねらせながら、地面を這うようにこちらへ迫りくる。
俺はそれをギリギリのところで、避けんとして、瞬間的な判断。
風の魔力を足から発現させ、高く跳び上がった。
こちらも光の鞭を作り出して、薙ぎ払う。
「あちゃぁ、やっぱり同じ鞭使いにはバレちゃうかぁ」
モニカさんは言いながらにして、次から次へと鞭を振る。
俺は、スキル『目利き(高)』を発動して、目を見開く。
これも、普通の『目利き』よりは使い勝手がいい。
一般的には相手の魔力の程度がわかるぐらいのものだが、俺の『目利き(高)』は、身体の中を魔力がどう移動しているかまでひと目で見抜ける。
もちろん、筋肉の動きも手に取るように分かるし、骨の構造とて範疇に入る。
対象が動いていようが、関係ない。
要約すると、技を盗むのにはぴったりってわけ。
「光よ、縦横無尽に駆け回れ!」
「なっ、同じ技!?」
「それは少し違いますよ」
せっかくの『目利き(高)』。真似っこだけで終わるなんて、もちろんない。
なにせその弱点も、俺には見抜けるのだ。
乱れおそいくる光の鞭。
しかしそれは、モニカさんが持ち手を少し引き上げたその一瞬、たわむ。
その隙に、俺は鞭の硬度を上げた。
モニカさんの鞭が、途中で切れる。
反動でよろめいた、彼女の間合いへとすぐに飛び込んだ。
そこで、俺は魔法を解いて、鞭を消す。
「つ、強すぎる……! やっぱりまだまだだなぁ、私」
モニカさんが息を切らしつつ言う。
「気にしちゃだめですよー! ヨシュアは、例外っていうか特異点っていうか……。
おかしなくらい強いんです。私、Aランクなんですけど、到底敵いませんもん〜」
「……ということは、ヨシュアくんは。まさか幻のSランク!?」
いえ、Cランクです。
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