第28話 【side】サンタナ、捕まる。言い訳するも、信用などあるわけもなく捕まる。【これにて二章完結です】


その日。


終業後のギルドに、珍しい客が訪れていた。


「そうか……。一応気になってきてみたが、さすがはヨシュアだ。ソフィアもルリも無事に救いだしたんだね」


ローズ伯爵。

この街、ライトシティを治める美人貴族だ。


やや縮こまりながら、ギルド職員の女性は答える。


「はい。それから、ホセ・サンタナという冒険者を拘束しています」

「……あぁ彼か。それで、話を伺いたいというのは彼のことか?」

「恐れながら、その通りです。普段の素行を、よくクエストの依頼をされていたローズ様なら、ご存知かと思いまして」

「うん、確かに知っているよ。それだけじゃない」


ローズ伯爵は、資料の束を机の上に広げる。


そこには、覗きや脅迫など、サンタナの犯した軽犯罪が列挙されていた。


「最近は目に余る行動が多かった。とくに、私のヨシュア……ごほん。ヨシュアを身勝手にパーティー追放したなんてこともあったそうだ」

「ずいぶん気合が入った資料ですね?」

「そ、そうか? まぁ私のヨシュ……私のヨシュアは信頼できる冒険者だからね。彼のためになるなら、私もこれくらいはやるさ」


ギルド職員は、『言い直してもそれかよ』と思ったのは当然秘密である。





善良に過ごしていれば、まず入ることのない場所であった。

ギルド受付の奥、隠し扉の裏にある、小部屋。


そこには、一対の小さな机と椅子しか置かれていない。

日の光は届かず、火属性魔法による明かりも薄暗い。

そんな、尋問部屋で


「ち、ちがう! ただ少し口論になっただけで……。僕は手を出してなどいないさ!」


サンタナは、必死の弁明を行っていた。どうにか自分の罪を軽くしようとする。


「悪いが、貴殿の悪行については、いくつも証言も出ている」


しかし、尋問官にはまるで通用しなかった。


そのうえ、レンタル冒険者としての活躍で名の売れてきたヨシュアたちの証言に加え、ローズ伯爵の証言まで。


サンタナを信じるものなど、もういない。


「貴殿の行為は、卑劣極まりない。身柄を拘束させていただく」

「ま、待ってくれ! なにを言うんだい? 僕は子爵家の出だぞ! 君は僕より上の立場だとでも言うのかっ」

「残念だが、違反を犯した冒険者への罰則はギルドの管轄。問答無用で実施する。規則通りだ。

 ……ただし、条件次第では解放することも不可能ではないが」

「…………その条件は?」

「保釈金を、誰かに支払ってもらうこと。貴殿の場合、子爵家のご両親となりましょう」


サンタナは、くそ、と舌を噛む。


さしたと思った希望の光が、また黒い雲の裏へと隠れてしまった。


実家にだけは、知らせるわけにはいかない。


子爵家という貴族の中でも中間に位置する家柄のこともある。体面をひどく気にする親なのだ。


場合によっては勘当、追放されてもおかしくない。


サンタナには、立場への執着があった。

貴族の家出身という肩書きをどうしても外されたくなかったのだ。


積み上げた実績やパーティーメンバーを、己の傲慢により、すでに失っている。


前科持ちになろうとも、彼はそれに縋るほかなかった。


「…………逮捕するがいいさ」


力ない声が、狭い室内に響いた。



________________


二章終わりとなります。引き続き、よろしくお願い申し上げます。(^^)


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たかた

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