第27話 元所属パーティーは崩壊。俺たちには新たな仲間が増えるようです。





軽い事情聴取などを受けたのち、俺はミリリたち三人と合流する。


そのまま、カフェでのささやかな打ち上げとあいなった。


まさかの形でこそあれ、パーティーリーダーが罪を犯し勾留されたのだから、『パーティーをやめる』というソフィアの依頼は無事に達成されていた。


和気藹々として会が進んだ頃、


「それで、これから二人はどうするんだ?」


俺は単刀直入に尋ねる。


避けてもいい話だったが、それでは上辺を撫でているようで、落ち着かない。


あえて踏み込んだ。


ルリが、盛大なため息とともに、手にしていたフォークを置く。


「ヨシュっちと冒険っ! って言いたいけど、実はルリ。実家に帰らなきゃいけなくなったんだぁ。山に囲まれた田舎町の、ヤマタウン。

 どーしてもヒーラーの手を借りたい、って言われて断れなくて」

「……そっか。大変そうだな、大丈夫か、ルリ」

「行きたくないけどさぁ、ママの言うことだから無視できないし。ルリのヒールで治る人がいるなら、って思うことにした」


うん。ルリらしくて、いい決断だ。

彼女は、どこででもやっていけるだろう。


俺と違って、繕わないそのままの彼女で、だ。

ドジっ子なのが心配だが、そこは魔法をかけたお守りでも持たせておけばいい。


「また会ってね? また二人でお喋りしようね、ヨシュっち。約束だからねっ!!」


無理やり、小指を絡ませられる。ぷくぷくしていて、やわっこい。


周りからジト目が注がれるが……。別に犯罪ではないよ?


見た目はともかく、ルリは一つ下の十七歳だ。


「……約束なんてしなくても会うっての」

「そうそう、それから困ったことがあれば、いつでもレンタルしにきてねっ!」

「ヨシュっち、ミリリさんっ! ありがとうっ!!」


ルリは、俺とミリリの言葉に感激しきりであった。


ソフィアは、まるで姉のよう。それを、暖かい微笑みで見守る。


「で、ソフィアはどうなんだ。なにか決まってるのか?」

「うちは…………。とくに決まってないけど」


彼女は、俺と同郷だ。

実家はこの町から遠く、宿を借りて一人で暮らしている。


「じゃあ、レンタル冒険者やってみない? みる? みるよねっ?」


ミリリの目が、採用担当のそれへと変化していた。


「でも、うち、ヨシュアくんみたいに強くないし、いろんな役割果たせない。

 ミリリさんみたいに、明るくもないし……」

「初めは誰だってそうだよー。だから、ソフィアちゃんは新入冒険者だよっ!

 一から丁寧に教育するぜ〜っ! ってどうかな、ヨシュア。今思いついたんだけど」


いや、思いつきかよ!


できればノータイムで突っ込みたかったが、ソフィアが俺を窺っているのに気付いて、彼女と目を合わせる。


「……ヨシュアくんは、うちがいても迷惑じゃない?」

「そんなわけがないだろ」


即答できる質問だった。


「ま、ミリリの言う通りだな。やるって言うなら、俺も訓練つけるくらいやるよ」

「……! ヨシュアくんが、うちの先生……」


頬下をほんのり染めて数秒、ソフィアは小さく首を振る。


「ほんとにいい? しばらくは何にも役に立たないかもしれない。……会計とか、庶務なら得意だけど」

「おぉっ、それやってほしいかもっ! 事務系、苦手なんだよぉ〜。レンタルの割り当て担当とかもいいかもっ」


ミリリは、妄想を熱弁する。

その後、最初に俺へやったのと同じく、ガイダンスを始めた。


こうして、『彗星の一団』は崩壊。

俺たちには、新たな仲間が増えたのだった。



ーーそして、一方のサンタナは。

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