《俺、貸します》平凡だと追放された俺。実は攻撃も防御も陰で一手に担ってました。ギフト『無限変化』は全武器適性かつ大量スキル習得可!誘われたので【レンタル冒険者】始めます。天職見つけました!
第14話 俺、正式にレンタル冒険者になることに決めました! ついでに、ドロップアイテムを売ったらぼろ儲けです。
第14話 俺、正式にレンタル冒険者になることに決めました! ついでに、ドロップアイテムを売ったらぼろ儲けです。
それから数日。
サーニャとの再会は、なんとギルドの受付で、だった。
「あ、あの、本日の要件をお伺いします。ヨシュアさん、ミリリさん」
カウンターの反対サイドで、サーニャはうやうやしく頭を下げる。
まだ型ばった制服は、着られている感満載だ。
それもあってか、手続きをする所作もぎこちなかった。
「さ、さ、サーニャちゃんん!!? もう受付嬢さんになっちゃったの! はやい、はやいよっ!」
若干一名、さらに輪をかけてぎこちない動きになっていたが。
ことの顛末は、ミリリに報告を済ませていた。
それでも、このスピード就職はサプライズだったらしい。
正直、俺もびびってる。
「ちょうど欠員が出て人手が全然足りてなかったみたいで。ちょっと就職を希望したい、って話をしたらとんとん拍子に採用までいっちゃいました、……はい」
思えば、ミリリにレンタル冒険者の説明を受けた時も、ギルド職員が忙しそうにしていたっけ。
そこへ就職希望者が現れたのだから、渡りに船だったのだろう。
「それで、今日はどうしてお二人で受付に?」
「ヨシュアの持ってた、これの査定をお願いしにきたんだ〜。
持ち切れないくらい多かったから、私も来たの! お手伝い!」
「あぁ、すまん、サーニャ。頼んでもいいか?」
カウンターテーブルの上に、俺ははち切れそうに膨れ上がった鞄を置く。
中身は、ドロップアイテム。
追放されてすぐ、ミリリに突然勧誘を受けた『深闇の森』ダンジョンで、俺が集めていたものだ。
すっかり、換金を忘れていた。少し中身を改めてから、
「……し、少々お待ちください!」
サーニャは慌てて後ろへと引っ込む。
バックヤードから悲鳴のような声が聞こえてきた。
なにかと思ってミリリと目を合わせていたら、
「ち、超高い値段がつきそうなので、ちょっと今日中に終わらないかもしれません……。
状態がよすぎる、とかで。
最低でも100万セリカはくだらないみたいです」
「う、う、うそぉぉぉ!!?」
ミリリの甲高い声が鼓膜を震わせる。
耳を塞ぎつつ、俺も喉奥が引っ付いていた。
「それって、三か月は高い宿に宿泊できるじゃん……」
「それどころか、一年チーズも食べ放題だよっ!」
チーズへの価値観の差はさておき。
手当たり次第に、目に入った魔物を狩っただけなんだが……。
ともかく、いったん保留ということになり、俺たちは受付を後にする。
ふと見ればミリリの琥珀色の瞳に、涙が浮かんでいた。
「お、お金が手に入ったからって、レンタル冒険者、やっぱりやめるなんて言わないよねっ?」
「言わないっつの。てかまだ体験しかしてねぇからな」
ここでやめたら、次の就職先に響くやつだね、うん。
「ちゃんとやる気はあるよ。なんなら天職かもって思うぐらいだ」
あれから俺は、正式にレンタル冒険者の一員となっていた。
「『平均』でありたい」という自分の希望にもマッチするし、なにより色んな立場を経験できるのは面白そうだ。
「よかったぁ、ほっとしたよ〜。ヨシュアってば、どこにでも適応しちゃいそうだから心配なんだ」
「だからこそのレンタル冒険者だろ?」
「そーだけどさ! 取られるかもって不安になるの。も〜分かってよ、この乙女心!」
果たしてそれは乙女心なのか。たぶん、違うと思われる。
「私にとっては、一人ぼっちの私に手を貸してくれた、大大大ヒーローなのっ! 出逢ってからの時間とか関係ないよ。
一緒にいてほしいのっ」
振り絞るように言って、ぽかぽかと俺の胸をグーで打つミリリ。
ぷっくり頬を膨れさせる姿は可愛いし、面白くもあって、俺はふっと笑ってしまう。と同時に、胸が熱くなった。
俺は、アサガオの刺繍を軽く握る。
サンタナに追放を言い渡されたときの絶望が、とても遠いことのように感じた。
この先、誰にどんなふうにレンタルされていくのかはわからない。
けれど、きっとこの先の道で俺は、新たな自分の居場所を見つける。
そんな予感が俺の胸を叩いていた。
♢
…………一方、その頃。
____________
これにて一章分完結となります。引き続きよろしくお願いします。
もし、よければお星様を光らせて評価等いただけましたら幸いです。
たかた
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