《俺、貸します》平凡だと追放された俺。実は攻撃も防御も陰で一手に担ってました。ギフト『無限変化』は全武器適性かつ大量スキル習得可!誘われたので【レンタル冒険者】始めます。天職見つけました!
第13話 超レアスキルで、依頼人のエルフちゃんを助けちゃいました。涙ながらに感謝されるようです。
第13話 超レアスキルで、依頼人のエルフちゃんを助けちゃいました。涙ながらに感謝されるようです。
普通の探索スキルといえば、自分を中心として、せいぜい視界の届く範囲にしか使えない。
物陰に隠れた対象を見つける程度のものなのだが、俺の『広範探知』は違う。
ここ、ライトシティは、ギルドが設置されるなど一定以上の繁栄を見せる大きな街だ。
けれど、俺はその全てに探知をかけることができた。
脳に次から次へ、情報が流れ込んでくる。これを処理できなければ、探知魔法の意味がない。
エルフ族は、まとう魔力の種類が人とは微妙に異なる。
範囲を広げて行きつつも、俺は懸命に意識を尖らせる。
遠距離になるほど、それが要となってくるのだ。
そして、
「…………エルフ族、見つけたかもしれない」
「えっ、ほんと!?」
「あぁ、街の西端だな。もしかしたら行商かなにかで、移動している人なのかもしれない」
こうなりゃ、タイムアタックだ。
大きな盾を抱え、俊敏性に欠けるサーニャの手を俺は引いてやる。
「あ、あの、速すぎる……!」
『俊敏(高)』を使いかけて、思いとどまった。
たしかに、このままではサーニャの腕を肉離れさせてしまうだけになる。
「えっと、抱えてもいいか?」
「ひ、ひぇっ、抱えるっ!? あの、それは、もしかして抱きしめる感じの、その…………」
いや、今もじもじされる時間はないのだけど! そんなあからさまに、照れ顔されても。
可愛いけれど。
俺は、気に食わない自分のストレートヘアをむしりかいてから、腰を落とす。
サーニャの膝裏に手を入れて、ふわり、両手で抱きかかえた。
「お、お、お、お姫様!!!??」
「俺なんかで悪いけど、少しだけお姫様でいてくれよ」
「それは全然いい、いいんだけど……むしろこんなの……………」
顔を真っ赤にして、それから首元にうずめるサーニャ。
ご不満なら後で謝ろう、そうしよう。
いったん受け止められ方は気にしないこととして、俺はまず風魔法を使って、跳躍した。
近場にあった家の、屋根上へと飛び乗る。
もう日が暮れだしていた。けれど、市場はこれからが賑わいどきだ。
人ごみを避けるための、別ルートであった。
それに、近道にもなる。
屋根伝いに、俺は街を横断していく。
「……なんか、変な感じ。いつも見てる街が、低い……。
それに、速い…………!」
サーニャは、俺の腕に必死でしがみついていた。けれど、一方で口角は上向いていて、楽しそうでもあった。
探知で見つけたエルフの元へ無事にたどり着く。
「……な、なんですか、あなたたち」
サーニャよりは少し歳上といった感じのエルフさんが一人で歩いていた。
寿命は長いが、よく見れば、歳の差くらいは分かる。
人間でいえば、二十後半ごろの、美しい女性エルフだ。
背負った大振りの荷物を下ろして、背中に隠す。
「いや、盗賊じゃないですから。だろ、サーニャ」
「……は、はい」
サーニャにとっては、初めての他のエルフとの遭遇。
こみ上げるものがあったのか、あがってしまっているのか、じっとエルフさんを見つめていた。
「ほら、あとは自分で話せよ。それと、これももういらないんじゃないか?」
俺は、サーニャの頭に巻かれたスカーフをほどく。
エルフさんの眉尻がぴくりと動いた。
「相手もエルフさんだ。もう耳を隠す必要もないだろ」
「…………うん」
たどたどしいながらも、二人はお決まりの自己紹介から話をはじめる。
俺は、それを少し離れたところで見守った。
境遇が似ていたからなのか、意気投合するのは早かった。
もしかしたら、このまま二人して、どこぞへ流れていくの行くなんて可能性もあるかもしれない。
そうなったら、うん、きっといいことだ。
依頼人の期待に応えられたのである。俺としても、満足して家に帰れる。
……いや、その前に一応ミリリに報告でもしにいこうか。
ついでに飯でも買っていってやろう。
チーズをとろけさせまくったチキンなら。きっとご満悦間違いなしだ。
と、サーニャが俺の元へ駆けてくる。
「……ヨシュアさん、本当にありがとうございました! おかげで、やっと自分に向き合えた気がします」
気持ちのいい礼は、すでに言葉遣いが戻っていた。
レンタル冒険者としての任務は終わり、と言うことだろう。
「ずっと、なんでエルフに生まれたんだろって、立場を恨んでばかりいました。でも、同じエルフさんと話して、ちょっと分かったかもしれません。
立場を言い訳にしてたんですね、あたし。
珍しいものに見られるから、ってあたしの方から扉を閉じちゃってたんです」
サーニャは内省して、きゅっと裾を握る。
それから、にこりと笑った。
悩みの消えた、素敵な笑みだ。
「それじゃあ帰りましょう?」
「あれ、俺はてっきりあの人と一緒に旅に出るんだと思ったけど…………」
「ん? いえ。あのエルフさん、来月くらいから、この街のギルドで受付嬢をやるみたいなんです」
荷物が多かったことから鑑みるに、行商かと思ったが、なるほど。
むしろこの街へ引っ越してくる途中だったらしい。
焦って走り出したから、進行方向まで確認していなかった。
「だからってわけじゃないですけど、あたしもここに残ろうかなぁと。
もう分かってるかもしれませんけど、鈍いんです、あたし。
冒険者は向いてなさそうなので、受付嬢を目指すのもいいかなぁとか今思い始めました。
それに………………」
(…………ヨシュアさんの近くにいたい、なんて思っちゃったかも)
ほんの小さく、なにか囁かれた。
「今なんて……?」
「な、な、なんにもありませんからっ!」
そう声を大にし、首を目一杯振るサーニャ。
その長く尖った耳は、淡いピンクに色づいていた。
スカーフがないから、よく見える。
なんだ、エルフだからとか関係ない。ただの可愛い女の子じゃん。
なんにせよ、これで一件落着だ。
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