あるせかい02

バブみ道日丿宮組

お題:暑い殺し屋 制限時間:15分

あるせかい02

 事件というのは一秒ごとに発生してる。それは誰も気づかない、見ようともしないから当然だ。

 人は暇じゃない。自分のことで精一杯で誰かを助けようなどしない。

「……」

 毎日のようにみるいじめが変わらないのはそんな理由。

 ただ……いじめられるほうは辛い表情を見せない。まるで自分がこうすることで居場所を手にしたーーそんな錯覚さえ与えてくるほどだ。

 学校の一番人気の隣りに毎秒近づけるのだから……ひょっとするといいのかもしれない。

 裏の顔さえ知らなければ、おそらく彼女はどの世界に行ってもちはほやされるだろう。

「……またか」

 スマホに依頼としてメールが届いた。顔を向けると彼女は微笑んだ。そしていじめっこに指示を出した。

「できるでしょ」

 人払いをいじめっこが行い、教室には僕と彼女だけになった。

「それが仕事だからね」

 彼女は自分しか見ない。目に映る障害としての他人を排除し、視界を狭める。

「なら、早くしてね。お代はいつもの通りあのこが払うから」

 僕の仕事は減らない。

「わかった」

 助からない生命、意味のない命を狩る。それがこの世界での精一杯生きるやり方。褒められるようなことじゃないけれど、この世界はこれが普通。簡単に隣の人間が入れ替わる。

 もちろん僕がやってる殺しとしての仕事は、テレビでたまに取り上げられるけれど、進展が進むことはない。

『ここではないどこかでも毎日殺しは起こってるから、気をつけましょう』という注意だけで、テレビも警察も特に動かない。

 世界を動かすとしたら犯罪者ーー特に殺し屋。悪い奴らがいるなら先に潰してしまえばいい。警察としても手順を踏む必要がなくなる。対象が消えれば事件なんて関係なくなるのだから。

 そして悪い犯罪者の行動に汚点がないなら見逃して人の数を減らす。

 そんなあり方だ。

 僕は、僕たちはそんないびつな世界で生きてる。

 小説や、映画のような夢の世界はここにはない。血生臭い人の香りがするだけ。

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あるせかい02 バブみ道日丿宮組 @hinomiyariri

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