心の景色
バブみ道日丿宮組
お題:素人の光景 制限時間:15分
心の景色
あの景色を最後に見たのは、小学校の頃。
船だけが外へといける唯一の移動手段だったこともあって、若い子というのはほとんどいなかった。老人が老人のためのコミュニティを作り上げてた。
学校なんて監視して、自分のおもちゃを作り上げるような場所だった。体罰に叱責。耳がきーとならない日なんてなかった。
ただそれも年を重ねるごとに少なくなった。老人たちが次々と息を引き取ったから。長老会のような老人たちの組織があったらしいけど、それもボスがいなくなり解体。
大人たちが島を見る形になった。
それからはいろいろなものが本州からやってきた。コンビニとか、映画館とか。ただ人がいないせいもあってどれも長続きしなかった。
そうして島から本州へと引っ越しが始まった。
誰が言い出したのか、誰から始めたのか。島から人がいなくなるまで誰もわからなかった。いや、知ろうともしなかった。
島には傷しか残ってない。
そんな記憶なんて辛いだけ、そう私は思う。
大学生になった私は、将来に悩んでた。
どうすれば一番いいのかいい案が浮かばなかった。いや……悩むと古傷が傷んだのがきっと原因。どうしてお前はできないんだと何回も殴られて痣。長袖を脱ぐことができない理由。記憶を忘れたとしても服を脱げば思い出す。目を閉じれば匂いすらする。
その嫌な気分を一枚の絵にしたら、展示されることになった。素人が適当に描いた光景だというのにいろんな人が評価した。
私は戸惑いしかなかった。
けど、大事な人に出会えた。
美術の開拓者と言われた人が私に声をかけてくれた。私の痣を優しく受け入れてくれた。私はようやく老人に許されたのだろうか。幸せになっていいのだろうか。
母の仏壇で言葉を作っても、ほんとの気持ちは昔以上浮かぶことがなかった。
心の景色 バブみ道日丿宮組 @hinomiyariri
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