第25話 誕生! エロマニアw
★★★(テスカ)
「ええ加減にせえ! 誰がお前なんか庇うか!」
何でウチが犯罪者を助けなアカンねん!
ワケわからんこと言うんちゃうわ!
ワケの分からん仲間意識、都合のいいときだけ前面に押し出す腐った仲間意識!
そんなもん、ウチは完全に無視したる!
ウチは完全にヒートアップしとった。
許されへん存在やおもたから。
だからウチがそう言い放ってやったら、オッサン、恨みがましい顔でウチの事見てきよった。
そんで。
「同じカンサイ人やのに、カンサイ人を助けないんかい……?」
……なんやて?
カッチーン、ときた。
ふざけるんやない。
お前にウチに恨み言を言う資格なんて一片も無い。
お前が罪を犯したのはお前が悪いんや!
誰のせいでもないわ!
犯罪歴があるから帰化できへん?
知るか!
ウチのオトンとオカンはしっかり帰化しとんねん!
犯罪歴が無いからや!
その前に犯罪を犯したのはお前の愚かさやろ!
その愚かさの報いを他人のせいにすんなアホンダラ!
自分のしでかしたことの責任もようとれんのかオッサン!
呆れ果てて言葉もあれへんわ!
それで反省するならまだしも、さらなる犯罪を犯す言い訳にするなんて!
最低や! 最低の最低や!
「やかましい! 同じちゃうわこの犯罪者が!」
こいつだけは許されへん。
こいつを許したら、カンサイ人の名誉も誇りもあったもんちゃう。
こういう奴だけは、絶対に許したらあけへんのや。
だからウチは一切容赦せん!
そしたらオッサン、さらにワケ分からんことを言ってきおった。
「この裏切りもんが!」
何が裏切りもんやねん!!?
カンサイ人の犯罪を庇わないのが裏切りもんなんかい!?
甘えんなボケ!
「お前みたいなやつが居るから、カンサイ人の評判悪くなんねん! お前こそカンサイ人の裏切りもんや!」
ウチは指を突きつけて、言葉を叩きつけ続けた。
気が付いたら、興奮しすぎて泣いとったわ。
こんな甘えた、大人になられへん、ゴミみたいな、犯罪常習者。
こんなんと世間一般では同列に扱われとる。
それが悔しくて、情けなくて。
全力で糾弾しながら、ウチは泣いとった。
そしたら……
「……テスカさん」
そっと。
後ろから抱きしめられた。
ええ匂いがする髪の毛。
芯は強い、優しい声。
ヒカリさんやった。
「落ち着いて、ね?」
誰もテスカさんのこと、こんな奴と一緒だなんて思ってないよ、って。
言うてくれた。
そこで、ぷつん、とウチの中で糸みたいなものが切れた。
じわり……と本格的に涙が止められなくなった。
次の瞬間、ヒカリさんに縋りついてウチは泣いていた。
わんわん泣いていた。
ヒカリさんは、そんなウチを優しく抱き留めてくれてたけど。
そこで。
「畜生……5000円くらいなんでポケットマネーで誤魔化そうとしないんだよ……お前らのせいで俺は破滅だ……泣きたいのはこっちだ」
そんな何の反省も無い、アホ丸出しのクズ台詞が零れて来た。
無論あのオッサンや。
この期に及んで、自分の罪を全部他人のせいにしとる。
救いようがない。
それを聞いて、ウチの中の気持ちがまた昂って来たんやけど。
また、ウチが怒り出す前やった。
「……ちょっとは黙ったら?」
驚くほど、冷たい声やった。
だから、ウチの怒りの声は引っ込んだ。
……ヒカリさんやった。
「自分の行いで女の子を2人も傷つけて、出てくるのは意味不明の戯言ばかり。少しは申し訳なかった、生きてて恥ずかしいとかそういう言葉は無いの?」
その声音には、何の怯えも無かったし、慈悲も無かった。
「な、なにを……!」
「物理的にその口を閉じてあげましょうか?」
脊髄反射で言い返そうとするオッサンの言葉に被せるように。
ヒカリさんはそうピシャリと言いはった。
ウチらにはとても頼もしく聞こえたけど、オッサンには恐怖やったと思う。
これ以上喋ったら、口がきけなくなるまで殴るぞと。
そう、ヒカリさんは言外に言うたんや。
声音に、ものすごい説得力があった。
逆らったら、本当にやられる、みたいな……。
静寂。
それを破ったのは、ヨシミさんやった。
「……このことについては、アイスマンさんのところにしっかり報告させていただきますね。ご自分のなさったことをそれでじっくりと噛みしめなさるといいでしょう」
糾弾する目で、淡々とそう言いはった。
情け容赦のない事後処理。アイスマンいうのは、氷屋さんの名前やろな。
これでオッサンはクビ。
下手するとブタ箱。
当然や。
オッサンのやつ、泣いとったけど、知るか。
自業自得やからな。全く可哀想やとは思わんかったわ。
「畜生……畜生ぉぉぉ……」
言うとれ。
そう、ウチが、ウチらがそんな見苦しいオッサンの泣き声を聞いてたときやったわ。
「……その心根……俺たちに通じるワン」
あいつらの声が聞こえてきたのは。
★★★(ゲーハー)
素晴らしいワン。
あの男、自分の目的のために、女の子をどれだけ深く傷つけてもまるで罪悪感を感じていないワン。
素晴らしいワン。(2回目)
あの男こそ、相応しい。
ノライヌと相乗りするに相応しい男……!
俺の存在に気づいた人間たちが、ざわめいているワン。
勝手に騒ぐがいいワン。
俺の目的は、あくまであの男……
「オイ、ワン」
「……!」
俺に声をかけられたことに気づいた男が、怯えの混じった目で俺を見返してきたワン。
俺は、グダグダ回りくどい事を言うつもりは無かったワン。
だから……
「そこのオマエ、俺と相乗りする勇気はあるかワン?」
「相乗り……?」
男は俺の言わんとすることが伝わっていないようだったワン。
この期に及んで……なんと察しの悪い……!
苛立ちを感じたワン。だから、俺は声を荒げながら
「オマエはこのままだと職を失って、下手するとブタ箱ワン! そのままでいいのかワン!?」
言ってやった。
言ってやった瞬間、男の顔が強張ったワン。
ようやく分かったワンか。
自分の立場と言うものを!
「その前に、俺と合体して超人になってみないかと言ってるんだワン!」
そう。
俺たちノライヌエンペラーは、選んだ人間と同時にDLメモリを使う事で、融合し、1体の超越者になることが出来る。
その名も「エロマニアw」
俺が最後の手段として、融合相手として選んだ男がこの男だったのだ。
この男は素晴らしいワン。
女神マーラに女の子の泣きっ面を捧げるという我らエンペラー3人衆の心根に極めて近いものを感じたワン!
だからこそ俺は……こいつを最後の手段……エロマニアwへの融合相手として選定したのだワン。
エロマニアwになれば、もはや自力で元に戻ることは不可能。
だがこうしなければならないほど、俺たちは女神の寵愛を失いつつあるワン。
……だから……決断のときなのワン!
「……ど……どうせこのままじゃ俺は破滅だ!! 俺は悪魔とでも相乗りするぞ!!」
覚悟を決めたようだったワン。
男が、そんな叫びをひねり出したのを聞いたワン。
よし……
俺は「断面図」のDLメモリを取り出したワン。
それを、俺は男に投げたワン。
突如投げられたものを、男はなんとかキャッチしたワン。
落としやがったらどうしようかと思ったワンが、ちゃんとやったワンね。
「やめなさい!」
「やめんか!」
向こうで女どもが騒いでるワン。
邪魔が入る前に完了させないとワン。
「そのDLメモリのボタンを押して、首筋に金属部分を押し付けろワン!」
「わ……分かった」
戸惑いと焦りを滲ませながら、男は俺の言ったとおりに行動したワン。
『断面図』
そして俺も、もう1個のDLメモリを取り出して、同じ事を行ったワン。
『おさわり』
そして同時に金属端子を首筋に押し付けて……
視界が純白に染まり……
気が付いたときには、俺たちは融合していたワン。
俺は毛皮のような姿になり、男の全身を守り、強化していたワン。
そして男の両手には、2本の長剣が握られ……
首にはマフラーが巻かれていたワン。
「おおおおおお」
声が、2重になっていたワン。
俺の声と、アイツの声。
「力が漲るようだワン。これでもう誰も俺を馬鹿にできないワン」
そして衝動のまま、俺は、俺たちは言ったのだワン。
「さぁ、お前たちの罪を償う時間だワン」
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